二村典子「だんまりの口こじあけるねこじゃらし」(『三月』)・・


  

 二村典子第二句集『三月』(黎明書房)、著者「あとがき」に、


  『三月』は『窓間』に続く私の第二句集です。(中略)

 第一句集の時代は、一人で机に向かって俳句を作っていたという印象です。

 この二十年は句会のなかで俳句を作ってきました。ペンキ句会、東西句会、ごもく句会、ねじまき句会、指月句会、船団愛知句会等々、友人たちと一緒に俳句を作り、読み、考えるのはとても楽しいことでした。 

 もちろんそれはこれからも続いていくのですが、今後は「歩きながら俳句を作る」ことを試してみたいと思っています。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


  おだまきの花窓口に窓はなく       典子

  パラジクロロベンゼン春のとどこおる

  菱餅も畳も浮いている少し

  チューリップうっかりもらう皆勤賞

  草笛の笛と呼ばれるしばらくを

  夏蜜柑すわるだんだんなりすます

  かたわれはすぐいなくなるももすもも

  手も足も届かない椅子秋日和

  水澄めば済むほど遠ざかる

  赤ピーマンむにむにへバーデン結節

  つまらないから集まってみるこむらさき

  公共の場所にさくらの帰り花

  外されたマスクの中に言葉あり

  一月の日向ではぐれはじめたか 


  二村典子(にむら・のりこ) 1962年、愛知県生まれ。



     撮影・芽夢野うのき「糸ひくように花冷えて此処にいる」↑

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