鳥居真里子「かげろふや墓のすべては水である」(「俳壇」5月号より)・・
「俳壇」5月号(本阿弥書店)、愚生は、「俳壇時評/建前に雪崩れる四協会」を寄稿した。興味ある方は、直接、本誌に当たられたい。新連載・秋尾敏「旧派の俳句②」の中に、
(前略)例えば、村山古郷の『明治俳壇史』(角川書店・昭53年)などには、先に幹雄らが試験を受けて教導職となり、試験を逃げていた春湖らがあとから推薦で教導職になったように描かれているが、事実は逆である。
先に推薦で、為山、等栽、春湖の三人が教導職になり、それに不満を持った幹雄が試験の実施を要求して、一年遅れて教導職になったのである。
教導職というのは、新政府の方針を国民に伝える国民教化が仕事で、最初神官が務めたが数が足りず、僧侶や俳諧宗匠も加えられたのであった。
春湖らが先に教導職に推薦された背景には、永平寺の住職環渓の力があった。
とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。
街並に届く芒種の夕明り 星野高士
雪雫交響詩歌文学館 照井 翠
平らかな町の古刹や春の風 佐怒賀直美
ひとひらの花の散りゆく嗚呼快楽 緒方 敬
雪積んで一つ目小僧出るといふ 雨宮きぬよ
残る鴨頼りなき日の孤心かな 谷中隆子
一握り柩に入れし早苗かな 若井新一
羽羽に逢ふため母より生れふぶく春 鳥居真里子
ひばり鳴き今を消しゆく砂時計 奥坂まや
牡丹百そこに溺れてゐるごとし 山本一歩
野となれと思ふ鞦韆漕ぎにけり 津川絵理子
冬木の芽生れしもとより上を向く 安田豆作
千の牡丹男波女波を蔵したり 永瀬十悟
母を待つうたた寝かとも涅槃像 名取里美
春の月搦め捕らむと寄生木(ほよ)の毬 窪田英治
廻廊の紙燭には灯を夕桜 山田六甲
飛花起こる史の光(かげ)奪い合うさまに 高岡 修
★閑話休題・・鳥居真里子「芥火に花の散り込む鷹夫の忌」(「門」4月号)・・
鳥居真里子つながりで「門」4月号。板倉ケンタ「門作家作品評」(1月号より)がある。それには、
鳥居先生には僕が中学生の頃から句会やイベントでお世話になっていて、つねづね鳥居先生の作品の自由さにはすごいものがあると感じている。「門」の皆様もそれぞれの方向に自由さを発揮されているのを強く感じた。
とあった。ともあれ、本誌より、いくつかの句を挙げておこう。
流氷よ永久の柩を原潜に 野村東央留
凍月を水面に残し樵の死 村木節子
夜の沈む鶴きてつつく鳩尾を 島 雅子
寒牡丹過剰防衛ではないか 中島悠美子
火やうなからだ掴めばまた吹雪く 泡 水織
氷湖の水まづ人形の血を洗ふ 加藤 閑
風花を纏ふみ空を折り畳む 三上隆太郎
息吹きかけて落葉折りゆく祈りかな 桐野 晃
手鞠つく刺し違へたら終はります 佐々木歩
遊牧の果てしなき空レノンの忌 岡本紗矢
鈴木純一「人形の出番待つ間の霾曇り」↑
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