中内火星「テレビ消せば終わる戦争ウクライナ」(『シュルレアリスム』)・・


 中内火星句『シュルレアリスム』(文學の森)、著者自装。序には、


  いかなるものにも属さない詩がある


 とあり、著者「あとがき」には、


 (前略)その肝心の中身であるが、ご覧に通りの代物で、読まれた方によっては「こんなものは俳句とは言わん」と仰る向きもおられよう。わたしはデザインの仕事を長くやってきた。ギャラをもらう以上、お客様の意向に従わざるを得ない。俳句は違う。わたしのための俳句であって、誰かのためのものでもなければ、ましてギャラをもらっているわけでもない。俳句ぐらいは好きにさせてもらう。気に入らない人は「選」しなければいいだけのことだろう。


 また、「補」項には、


 当初は全作品「書下ろし」でと考えたが、さすがにそれは及ばなかった。数句は古い句もあるが、大半の句はここ二~三年の句だ。勿論「書下りし」も多々ある。また、カバー絵はピカソ、マチスのデッサン画を参考に描いたもので、ヌードと蛸の遊びである。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


  ぱふぱふぱふ中身のないお金魚       火星

  百歳よりずっとい大きな雪だるま

  この高さあれば死ねるね花吹雪

  これまでのことこれからのこと遠花火

  わたしたち抱き合ったまま無重力

  不整脈一回二回春隣

  缶ビール簡単な話で終わる

  勤労感謝の日の油

  どうりで冬至

  鳥の巣やぎょうせいしえんなどない

  方針はないけど石鹸玉である

  パジャマでは戦えないが逃げられる

  家中にスイッチのあり寒戻る

  祭から黄泉までたちっぱなしなんだよ

  かってにしやがれたって案山子だし

  神と口論する後期高齢者

  死神を横に立たせて日向ぼこ

  

 中内火星(なかうち・かせい) 1949年、大阪生まれ。



★閑話休題・・森澤程「先師まだ散歩中なり水ぬるむ」(~ちょっと立ちどまって~2024.3~)・・

  

  東風吹かば笑つて話す母の恋      津髙里永子     



    撮影・芽夢野うのき「行く春やダウンコートを手洗いで」↑

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