結城万「鈴蘭のかそけき骨となりにけり」(『小鳥のわたし』)・・

 


 結城万第一句集『小鳥のわたし』(夜窓社)、著者「あとがき」には、


 俳句が世界で一番短いドラマだと教えてくれたのは鳴戸奈菜という俳人でした。ちょうど十五年前、その奈菜さんが同人誌「らん」に誘ってくださり、私の俳句人生が始まりました。(中略)

 そんな大切な「らん」が昨年百号で終刊を迎えました。自分の句集などとても作る気になれなかった私にも転機が訪れました。どんなに拙い幼稚な句集であっても、一冊にまとめてみたいと思ったのです。(中略)

 笑ってやってください。これは、私の明るいエンディングノートでもあるのです。



 本集の装画、挿絵も結城万である。集名に因む句は、


   窓枠の小鳥のわたしが覗く夜       万


 であろう。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。


  父よりも母は哀しき日向ぼこ

  にびいろの栗鼠のマントを盗みけり

  凍蝶の小さき骨を拾いけり

  憑りつけと言えば憑りつく枯いばら

  土塊のあなたの淹れるたんぽぽ珈琲

    むかし素人劇でロクサーヌを演じた母よ

  九十歳のロクサーヌ姫逝く夏近し

  春盛り栞の代わりの蛇の舌

  青鬼灯母の娘は道化なり

  十薬を挟みしままに父の本

  犬もわれも飛ぶ夢を見る


 結城万(ゆうき・まん) 1952年、東京生れ。 



       撮影・鈴木純一「連翹は飛ぶぞ飛ぶぞと口ばかり」↑

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