松澤雅世「そめゐよしのに水ことば風言葉」(『陰陽』)・・

 


  松澤雅世第4句集『陰陽(おんみやう)』(四季書房)、著者「あとがき」に、


 本句集は、「四季」創刊六十周年記念出版として上梓いたしました。

 前句集は、創刊四十周年記念の折の刊行でしたので、丁度二十年の歳月が経ったことになります。この間、環境や生活の激変の中で、看過して来た次第です。

 此の度の句集『陰陽』は、その二十年間のささやかな句集に他なりません。現状の生き様での生活感情と自身の生齢を重ね合はせながら、その都度、現在只今を描き出してゆこうと強い想いで作句して参りました。


 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。


  櫻月夜に行く先は決めてゐず          雅世

  一の蝶二の蝶謎をかけてくる    

  陽炎の中火だるまかずぶ濡れか

  やさしさのうすぼんやりと木の裸

    師を送る

  終の人息かかげたる秋絶巓

  流燈のはたてはだれもみてをらず

  とりとめのなく花かしこ水かしこ

  憲法の日や風のよに水のよに

  木犀や金の午前に銀の午後

  かくれんぼ春一番にみつかりぬ

  ゆきあたりばつたり抗体と大雷雨

  

 また、松澤雅世つながりで主宰誌「四季」2024.3-4月号(四季会)から、いくつかの句を挙げておきたい。


  角餅の団十郎丸餅の藤十郎         松澤雅世

  うす氷割られ困憊消えて行く        河村正浩

  たましいを置きざりにして山眠る     佐々木克子

  エスカレーター紅葉を敷いてみたいかな   広井和之

  クリスマスケーキほにやららしてゐたる   伊東 類

  男女来て寒の扉をこじあける        吉沢信子

  寒禽の奮ひたつてる未知の空        遠藤久子

  ケアハウスに行ってしまった冬薔薇     瀬藤芳郎

  百八の一打を突けば飛天舞う        池嶋庄市

  十七音に繋がれて去年今年         中山文子

  雪明かり幹片方に闇ありて        戸田みどり

  柚子味噌を身方につけて取り敢へず     難波昭子

  風花の言ひ訳に海めざしたり        石川綾乃

  令和六年福袋から阿鼻叫喚        倉林ひとみ




★閑話休題・・YO-EN唄会「黄昏に恋して⑲」(於:国立駅前・ギャラリービブリオ)・・



 3月24日(日)16時から、十松弘樹店主の国立・ギャラリービブリオでのライブ「YO-EN唄会「黄昏に恋して 2DAY⑲」の二日目に行って来た。「YO-EN(よーえん)東京ツアー2024春」は先日の阿佐ヶ谷「よるのひるね YO-EN ワンマンライブ」が夜間だったため行けず、愚生のような老人には、もうシンドイので、昼間の公演ならば、出かけているのだ。

 次は5月26日(日)17時半開場。パギやん・YOーEN・春日博文(hachi)「パギハチヨーエン ジョイントライブ3(於・ギャラリービブリオ)には行きたいな、と思っているところ(定員20名だから・・・予約しないとダメ)。

 


         鈴木純一「三つまで願いのかなう西行忌」↑

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