三輪初子「ふたたびの恋の夏蝶翔ばず舞ふ」(「わわわ」第8号)・・


 「わわわ」第8号(発行人 三輪初子)、その「編集後記」に、


 今、世界のあちこちで紛争・争乱が起きてをり、憂慮すべき事態が起きている。そんな中、自由な気持ちで優しさと強さを育てる詩心を囲む句座より、心から世界の平和を願って止まない。


  とあった。ともあれ、本誌本号より一人一句を挙げておこう。


  俳諧に格差のなかり月涼し        三輪初子

  沈黙の踊りの激し夏祭         豊田すずめ

  水澄むやトリケラトプスと旅に出る    朝倉華代

  寝たきりの母の清凌霄花        岩石むそむ

  若葉風停泊船のトタン屋根       小野田信子

  故郷の大和上布合歓の花        木村野安子

  寒鯉の餌につられぬ面構へ       五木田心華

  それどころではない花粉症なの      小林弘子

  ティファニーに並ぶ力士の十二月     小林 繭

  陽炎を膨らませ来るマグロカツ      象ぞう造

  住み慣れて今日が見納めリラの花    滝沢ひとし

  ちちろ虫こころあたりのあゝあれね    中嶋月草

  停止線踏み越えてみる夏の空       西田遊々

  紅の呼び白の応へて梅二本       野村くじら

  「段差あり」立て看板に火取虫      浜野桂子

  日だまりに猫のあつまる師走かな  森田ふらみんご

  春闘や皮算用に浮かれをり        山﨑猿屋



★閑話休題・・豊田すずめ「忘られし黒の手袋なごり雪」(「わわわ句会」第126回/於:ギャラリー絵夢「豊田紀雄個展『黒の船出』」より)・・




 偶然の出会いというべきか、愚生の学生時代からの友人Mの知人に、豊田すずめ、三輪初子という共通の人がおり、その縁で、新宿は絵夢ギャラリーで開催されていた豊田紀雄個展「黒の船出」に出かけた。3月12日(火)午後、その場で行われていた「わわわ句会」での句の感想を、厚かましくも述べるということにあいなった。というわけで、短い時間ではあったが、楽しく過ごさせていただいたのである。以下に、その折の句を紹介しておきたい。兼題は「野遊び」「黒」。

  

  初桜黒澤明の黒メガネ          初子

  野遊びや手にくつついた草草草      月草

  野遊びの母子に交りシーソーの      信子

  春動く陣痛室よりLINE         心華

  ねえ若布幼き友が手を振りぬ       ふら

  黒板に感謝の二文字卒業生        桂子

  春風や眠る少女の泣き黒子         繭

  野遊びやスマホゲームに興じる子     猿屋

  黒光り菩薩の頬や春の風         遊々

  野遊びに行けぬ日のおにぎり五つ     ぞう

  黄昏て未来の浮ぶ末黒かな       むそむ

  野遊びや無邪気に駆ける日は遠く     加代

  葬送の指の墨跡憂ふ春          野安

  春風や引き留められて辞めたいの     弘子

  黒皮の手帳にひとひら桜花       すずめ



      撮影・中西ひろ美「良い人となりこの町の暖かさ」↑

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