岩井かりん「鷹渡る無窮の空を引き絞り」(「甲信地区現代俳句協会会報」第102号より)・・


  「甲信地区現代俳句協会会報」第102号(甲信地区現代俳句協会)は、「第36回紙上句会結果発表」である。選者の皆さんの特選・入選。佳作などの選評も、それぞれ、読んで頂きたいところだが、ここでは各選者の特選句を紹介しておきたい。


 ゆきあひの空やパスタを折りて茹づ  小伊藤美保子(秋尾 敏選)

 鷹渡る無窮の空を引き絞り       岩井かりん(大井恒行選) 

 人が人生む朝の陽よななかまど      吉池史江(神野紗希・宮坂静生選) 

 虫の夜や熔岩原磁気帯びしやう      黒沢孝子(城取信平選)

 曼殊沙華謎かけしまま忽よ消ゆ      窪田英治(佐藤文子選)

 望の夜や傀儡ぱくりと口を裂く     大野今朝子(堤 保徳選)

 炎天に愁ひの欠片見つけをり      伊藤みち子(中村和代選)


 加えて、以下には、愚生の入にした選句と一句高点だった句も挙げておこう。因みに、愚生の特選に選んだ句「鷹渡る無窮の空を引き絞り」の句は、一句高点のなかでも最高点を獲得していた。


 猪独活と白雲呼応してゐたる       宮坂 碧

 石榴より未知のことばが漏れてくる    矢島 惠

 巫女髪解けば少女に水の秋        篠遠良子

 はんざきのたらふく時間食ひし腹     仲 寒蟬



★閑話休題・・大井恒行「鳥の口腔 空(くう)の茶化しを南風(幸彦)忌」(「俳句四季」3月号)・・



「俳句四季」3月号(東京四季出版)の特集は「続・続・令和の新創刊」。図らずもその中に、恥ずかしながら、「ことごと句始末」として、止む無く経緯を記した。ともあれ、他誌の方々の句も挙げておきたい。


  今生の終の涙も露けしや          名取里美

  雪割つて割つて炎(ほむら)を探りけり  五十嵐秀彦

  研ぎ澄ます聴覚森に二輪草         小沢真弓

  アインシュタインの舌の罅割れ原爆忌    中村猛虎

  春焚火そこらの草や枝を投げ        西村麒麟

  陸封の花の夢なれ船団忌          大井恒行

  小春日や亀のゐさうな石に亀        神谷章夫

  春の雪きりんはきっと肩が凝る       西田真己(まみ)

  土塊をちんとひねりし雛のかほ       髙田正子

  花の山まるまる珍景?ごときかな     橘川まもる

  神留守の大厄の母吾を産みし       中村与謝男

  故郷はいつも群青雪だるま         富澤秀雄

  み吉野の花の絵巻は落花より        山田閏子

  父遠し一遍とほし山に雪         原田マチ子

  冬牡丹戯画の兎が蹴りました        川越歌澄



         芽夢野うのき「花を待つ手首冷たし髪冷たし」↑

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