佐々木敏光「飼ひならす虚無や天空おぼろ月」(『富士山麓・秋の暮』)・・


  佐々木敏光第3句集『富士山麓・秋の暮』(ふらんす堂)、カバー写真は著者、田貫湖。その「あとがき」に、


 この第三句集『富士山麓・秋の暮』には。ネット版・佐々木敏光個人誌「富士山麓(第二期)」の二〇一八年から二〇二三年にかけて掲載した句から選んでのせている。

 この九月に八十歳になってしまった。

 掲載句の中には昔を思い出して作った句もあり、かならずしも季節順にはなってない。そこで、並べなおすのはやめて、個人誌で発表した順のままにしておくことにした。

 これからも句をつくらないわけでもないが、諸般の事情により句集はこれで最後といった思いである。


とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  神死せりニーチェも死せり大銀河       敏光

  絶滅は桜吹雪をあびてから

  虫の闇われらそれぞれ島宇宙

  「健康」の諭吉も死せり秋の暮

  革命のあとの幻滅春の虹

  独裁者四方に雑居春の闇

  なんとなく笑顔ですごす鬱の春

  死に至る病の地球大銀河

    一九四三年生れ

  記憶なき記憶の日々や終戦日

  零戦のあらはれさうな夏の雲

  ばちあたりいつしかわれも老いて秋

  いつだつて時代は冥し五月闇

  虫の闇われにはわれの真暗闇

  大枯野さまよふ後期高齢者

  ふらここや未来へ漕げりまた過去へ

  監視カメラ東京駅に柿を食ふ

  駿河甲斐富士はよきかな雪の富士

    バッハ、ミサ曲引用

  あはれんでください、独裁核の冬


 佐々木敏光(ささき・としみつ) 1943年、山口県宇部市生まれ。



★閑話休題・・姜信子 ますます はびこる「百年芸能祭」(於:仙川・ツォモリリ文庫)・・






 「百年芸能祭」とは、その企画のはじめは、関東大震災を迎える2023年9月をめざして、日本各地で大小さまざまに繰り広げられる「鎮魂」と「予祝」の芸能祭のこと。みなで歌い語り踊る。目指すは、自らの声も音も歌も失くしてしまった命が、歌って、踊って、生きてつながって、理不尽を突き抜けようと、自由に、同時多発的に「百年芸能祭」を立ち上げようというもの。今回、東京においては、「百年芸能祭 関西実行委員会」が仙川の「アートスペース&手仕事ギャラリー ツォモリリ文庫」を会場に開催された(能登支援も含め)。

 その二日目、2月25日(日)午後1時半~に愚生は出掛けた。鎮魂チンドン(ピヨピヨ団)、百年予祝の響き(繭&零=乾真裕子、黒田零)、百年を唄う(末森英機 ナマステ楽団、さとさとみ)、ジンタらムータ(大熊ワタル:クラリネット こぐれみわぞう:チンドン・歌、近藤達郎:キイボード)などの出演があった。ナマステ楽団の末森英機には、芸能百年祭の中心メンバーの一人姜信子を紹介された。 



     撮影・芽夢野うのき「むらきものこころ紫雲英野に雨また霙」↑

コメント

このブログの人気の投稿

救仁郷由美子「遠逝を生きて今此処大花野」(「豈」66号より)・・

小川双々子「風や えりえり らま さばくたに 菫」(『小川双々子100句』より)・・

福田淑子「本当はみんな戦(いくさ)が好きだから握り締めてる平和の二文字」(『パルティータの宙(そら)』)・・