棚山波朗「女の手とどくところに鵙の贄」(『塔』第11集より)・・


  塔の会編『塔』第11集(風心社)、その帯に、


 俳人協会が発足して七年後、同協会の中堅・若手俳人16人(草間時彦、加畑吉男、星野麥丘人、岸田稚魚、香西照雄、原裕、磯貝碧蹄館、八木林之助、轡田進、清崎敏郎、鷹羽狩行、岡田日郎、成瀬櫻桃子、松本旭、松崎鉄之介)によって結成された超結社の句会集団。初会合は昭和43年2月。会員の死去・退会を重ねながらも、次々と新入会員を迎え、現在23名が参加。令和5年、発足55年を迎えた。


とある。巻末に「収録作家資料展望」、「塔の会五十五年小史…岡田日郎/蟇目良雨」が併載されている。「あとがき」は鈴木太郎。ともあれ、以下に、アトランダムになるが、一人一句を挙げておきたい。


  メメントモリ蝶の銀粉こぼれては       石嶌 岳

  死を以て遂に結願花行脚           稲田眸子

  寒椿水の硬きに差しにけり          今瀬一博

  火のにほひしてどんどより吾子帰る      上野一孝

  さざなみやとうすみとんぼうせやすき     菅野孝夫

  たんぽぽの絮を黄泉路の母に吹く       菊田一平

  木の芽張るひかりや宙にひろごれり      栗原憲司

  ふるさとに叱られに来ぬ雪起し        小島 健

  深代風溢れて臘梅の斜面(なぞえ)     佐怒賀直美

  山風に飛花のみちすぢありにけり      しなだしん

  冬麗の耳に入りたる翅の音          鈴木太郎

  井戸にこゑ落とせば返る初昔         鈴木直充

  一滴の水を落として蜻蛉生る         染谷秀雄

  処暑の草ひつぱつてゐる雀かな       寺島ただし

  草の香をまとひて月の上がりけり       中山世一

    棚山波朗さん逝く。「料峭起」と名付ける 

  一本の柱に影や料峭忌            蟇目良雨

  永き日の飛天の鼓打たず鳴る         檜山哲彦

  各駅停車やずうつと春の海          広渡敬雄

  たまゆらの冬夕焼けの雲の金         松尾隆信

  三寒は我に四温は母に来よ          望月 周

  嫁入りの道まだ残り臭木の実         森岡正作

  米寿の母迷はず十年日記買ふ         安原谿游



     撮影・中西ひろ美「さえずりを奏でていたる二月尽」↑

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