大井恒行「ダモイ(家へ)また聞くに堪えざる春隣(ウクライナ)」(「俳句界」2月号)・・


 「俳句界」2月号(文學の森)の特集1は「俳句評ノススメ」。執筆陣は、巻頭論に岸本尚毅「『〇〇評論』というもの」(俳句評論ノススメ)、論考に青木亮人「通説や先入観をいかに揺るがすかー資料を読む大切さについて」(俳句評論へのステップ)、今泉康弘「お金にはならないが、心に残る文章を書く方法」(私の評論執筆法)、岡田一実「彫琢(ちょうたく)」、坂本宮尾「俳句評論の出発点」(名俳句評論ベスト)、筑紫磐井「写生を超えた三つの評論」、依田善朗「俳句の本質を考える評論」。

 久々に印象深かったのは「佐高信の甘口でコンニチハ!/関西生コン事件の真実」、ゲストは弁護士・久堀文。その中に、


(前略)佐高 労働組合というものが目の敵にされているからなんだよな。だから、検事が組合から「抜けろ」なんて言う。

 久堀 そうなんです。関西生コン事件では、検察官が取調べ中に、組合員に対し組合を辞めるように勧めたり、「連帯(関西生コン支部)をこれからどんどん削っていく」とも言ってます。これは、単に検事個人の考え方からの発言ではないと思うんですよ。検察内部で、意思統一があるんじゃないかという気もしています。 (中略)

 久堀 だから、関西生コン支部は、コンプライアンス活動も進めています。会社が、生コンへの加水などの違法行為がないよう、監視しているんです。

 佐高 労働組合は、労組者が自らの待遇改善だけを求めているわけではなく、ある種、公共の安全を守っているんだという点をわかってほしいね。それなのに、次々と逮捕して、労働組合員と犯罪者をいっしょくたにしているよな。

 久堀 しかも、ほとんど前科もなにもない方が多いのに、罪を認めないからということで検察官は保釈に大反対し、裁判官はなかなか保釈を認めないんですよね。保釈を認めてほしいがために、組合を辞めた人は大勢います。まさに人質司法です。本当にひどい。

 佐高 裁判官、検事もそうだけど、どんどん劣化しているよね。

 久堀 本当にそう思います。人の心がないというか。現在の関西生コン支部の委員長は六四四日間も勾留されました。今年三月に大津地裁で実刑判決が下されて、控訴中です。この判決を読んだら、そもそも労働法への理解が全くないと思いました。

佐高 裁判官とか、労働法を勉強しなくてもなれるんだな。あるいは意図的にしないのかもしれないね。 


 とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。


   花々は東風に生身(なまみ)を鍛へたり   佐藤文香

   空耳に響く咆哮猟名残           山田佳乃

   路地曲り行く料峭の石叩          古田紀一

   ひかがみを猫よぎりたる端居かな      櫂未知子

   猫の子のでんぐり返りして真顔      土肥あき子

   はるかぜの耳もしっぽもねこのうち    倉阪鬼一郎

   自爆せし直前仔猫撫でてゐし        堀田季何

   猫じやらし先に迷惑さうな猫        仲 寒蟬

   去勢後の猫にも春来静かに来       家登みろく

   一枡に百日が過ぎ絵双六          若林哲哉

   ぐうぐうと電柱うなる樹氷咲かせ      宮坂静生

   戦車の野遊び 業火の蒼空 一斉蜂起    大井恒行

 


       芽夢野うのき「一月のチューリップ美し虚の光」↑

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