佐藤文香「ぬかるみのあかるみを踏み友なりけり」(『こゑは消えるのに/アメリカ句集』)・・
佐藤文香『こゑは消えるのに/アメリカ句集』(港の人)、著者「あとがき」に、
二〇二一年十月から二〇二二年九月までの一年間、アメリカ西海岸、カリフォルニア州のバークレーに住んだ。アメリカに住みたいと思ったことなどなかったのに、配偶者について行くことに決めたからだ。(中略)
日々のなかには、誰かに語って聞かせるほどでもないことが、わりとある。
そういった部分に価値を見出す俳句のやり方は、わたしにとってありがたかった。写真に撮らないようなこと、人に送らないようなことを、母語の定型詩が、書かせてくれた。
とある。集名に因む句は、
こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに 文香
であろう。外国語にからきし疎い愚生は、当然ながら、飛ばし読みになるが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
加州着架空に雲のなかりけり
Powell Street 教はりて知る香は大麻
湾に凩目を惑星に喩へ合ふ
教はりたる春を聴きたいやうに聴く
山毛欅林布を広げて風を盗む
川にゐて鰓の疼きを他に告げず
ゆくフェリー海の背中を泡立てて
行き場なし王維絶句に湧く雲も
文月のよく飛ぶ鳥であられるか
詩の九月唄の市俄古(シカゴ)に湖を見ず
雪や地図に友らの生くる国散らばる
★・・佐藤文香写真展「こゑは消えるのに」(於:写真屋 monogram 2Fギャラリー・目黒区鷹番2-19-13/03-3760-5852)2024年2月2日(金)~2月12日(月・祝)[7(水)、8(木)は休廊]・・
案内の葉書に、「句集『こゑは消えるのに』/詩集『渡す手』刊行を記念して、アメリカで撮影した写真集の展示、書籍の販売を行います」とあった。
佐藤文香(さとう・あやか) 1985年生まれ。
撮影・芽夢野うのき「矢印は不毛地帯か冬銀河」↑
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