垂水文弥「門高く少年を待つ寒の明」(「門」1月号)・・
「門」1月号(門発行所)、新年号らしく「門」各賞受賞者 が掲載されているが、今どきの結社には珍しい20歳の青年に新人賞が与えられていた。その垂水文弥の「受賞のことば」の中に、
これから自分の経歴には「門新人賞」と載ります。烏滸がましいかもしれませんが、それを見た方が「門は良い人に賞を与えた」と思ってくださるような作品をこれから作っていけたらと思います。
とあった。その心意気やよし、と思う。今後の幾多の荒波を乗り越えてほしい。また、「門作家作品評」には駒木根淳子が、
かすかに狂ふすすきかるかや抱きし汝 鳥居真里子
「かるかやすすき」の頼りないほどの軽さ。枯れてゆくその存在の軽さに心がざわつき、不穏な世界へと誘う。「汝」と二人称だが、一人称の、たとえば自画像とも受けとれる。あるいは鏡の中のもう一人の自分を見つめては問いかけ、他者との距離を模索し思考する姿とも。(中略)「すすきかるかや」が象徴する深い寂寥感が際立ち、その孤独感は底知れない。
と鑑賞している。ともあれ、以下に各受賞者を含めて、いくつかの句を挙げておこう。
つつつつと月鶴の羽とぞ月さらふ 鳥居真里子
にげみづがいまにげみづと衝突す 矢野孝久
無花果は隠喩さみしいマルコ伝 川森基次
金の雲無人の舟のマスト灼く 加藤 閑
富士山を方丈に入れ涼しかり 三上隆太郎
カラフルな卵弔ふ雲雀笛 中澤美佳
くちなはが赫い記憶を連れてくる 垂水文弥
記すことみな幸であれ初暦 佐藤 海
空蟬にのちのいのちのありにけり 内田くみ子
見舞ふとは別れにゆくこと石蕗の花 野村東央留
秋の湖水かげろふを欲しいまま 石山ヨシエ
少年の十指ことどとく小鳥 泡 水織
芒野の遠き鳥わたしのそばの鳥 成田清子
新米が届き米寿と知らさるる 梶本きくよ
竜淵や手づかみのもの火の匂ひ 村木節子
銀座線紙の袋の栗と柿 島 雅子
こんじきのはじめゑのころぐさすだく 中島悠美子
秋の風身をゆるやかに結跏趺坐 岡本紗矢
罪状のやうな手紙とラ・フランス 佐々木歩
乗換のたびに遅るる素秋かな 桐野 晃
撮影・中西ひろ美「いちねんのやるべき事を整えてほっとする間もなく年が明く」↑
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