島貫恵「母の日よ雲見るたびに膨らみぬ」(「俳壇」2月号)・・

 

 「俳壇」2月号(本阿弥書店)、メインは「第38回俳壇賞決定発表」である。選考委員は井上弘美・佐怒賀正美・鳥居真里子・星野高士。受賞者は島貫恵「遠くまで」、次席は尾上直子「最後の子」。その他、巻頭エッセイは小林貴子「歳時記 第六巻」、その結びに、


 (前略)地球全体に俳句への関心が高まり、四季を持たない地域でますますhaikuが実作されてゆく未来に向けて、「大歳時記」も次回はぜひ、春・夏・秋・冬・新年の五冊に加え、六冊目として「無季の部」を編んでほしい。


 とあった。因みに、愚生も今月号より、年4回、「俳壇時評」を老骨をさすりながら執筆することになった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。

 

  いにしへの闇の中なる鹿の子かな     島貫 恵

  あたたかしマトリョーシカの最後の子   尾上直子

  啓蟄の天よりも地に誘はれ        西村和子

  春隣る風の御櫛が海を梳く        原 朝子

  蓮枯るる如水の智恵も及ばずに      野村亮介

  絵双六白寿めざして何占ふ        大高霧海

  日当りて枯れゆくものの烟らへる     松岡隆子

  木菟に成れぬ梟独りごつ         西池冬扇

  ごみ箱がごみに出されて年の果     渡辺誠一郎

  落葉踏む音奏でゆく一行詩       稲畑廣太郎

  極月の噴水に乗るちぎれ雲       上田日差子

  にらむ、なげく、吼ゆる椿よいづれ汝  恩田侑布子

  はるのうみ人も小舟も景の棘       髙柳克弘

  太りゆく氷柱に風の記憶かな       田中葉月



          芽夢野うのき「寒林や光のなかの影を抱く」↑

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