岸本マチ子「足くんで白いふくろうになっている」(「WA」新第11号・通巻第105号より)・・


 「WA」新第11号・通巻第104号(WAの会)、特集は「岸本マチ子追悼」、上地安智「岸本マチ子セレクション50句」、各同人などによる「感銘の一句」と「マチ子先生を偲ぶ」。それらの中から、以下に、本誌本号より岸本マチ子句をいくつか挙げておこう。


  うりずんのたてがみ青くあおく梳く       マチ子

  春の野に機関銃んど磨いている

  ガムランの死後かも知れぬ闇に触れ

  いつも断崖おんおん裸身みがくなり

  ずーっと異端これからも異端羽抜鳥

  八月は青の深部にきのこ雲

  面罵すりこおろぎもいて一人なり

  冬銀河きのう乗るはずだったのに


 思い起こせば、攝津幸彦がまだ健在だったころ、岸本マチ子は「豈」同人であった。たぶん、最初に最後だった、本郷の旅館に一泊しての同人総会に、はるばる沖縄から参加されたのであった。その折、すでに一番年長にして姉貴分だった彼女が、出席者のなかで、もっともエネルギッシュで元気だったことを覚えている。そして、すぐに1994年下半期・第44回現代俳句協会賞を高野ムツオととも受賞されたのだった。「豈」同人の女性俳人では、池田澄子に次ぐ二人目の快挙だった。もう30年近く前のことだ。ともあれ、本誌より、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


  404not  found 虫しぐれ         赤城獏山

  楼門に鴉あつまる秋の暮           伊波とをる

  カンナ咲くもっと戦後であっていい       上地安智

  老ゆる日の良きことのあり実むらさき     荏原やえ子

  結願の道足ばやに秋の晴            大島知子

  存分に生きて銀河へ導かれ          大城あつこ

  語部(かたりべ)も戦の動画山守(やもり)鳴く 

                      親泊ちゅうしん

  石投げれば石が鳴きだす原爆忌         加用 伸

  七月にマチ子先生逝きました          金城英子

  天の川(ティンガーラ)命名見事島言葉     金城悦子

  冥銭(ウチカビ)や亡夫が筆頭口ごもる     金城幸子

  百年のフィルム再生震災忌          具志堅忠昭

  忘れるも良しとし生きる冬日和         桑江光子

  沖縄のはたたの神やマチ子逝く         幸谷恵子

  てつぽう百合雨吸ひ摂りて死者の花       小橋啓生

  測量の目印の杭バッタ跳ぶ           小森 茂

  AIに礼をひとこと文化の日           そら紅緒

  空蝉を父母かと思い埋めている        たまきまき

  鰯雲比翼の鳥は絶滅危惧種          渡嘉敷敬子

  新米に地球(ほし)の余命を占いて     仲宗根真知子

  和の会の尊き花の一つ散り           比嘉正詔

  一天にドクターヘリの冬ざるる         真鍋俊男

  法の世に沖縄敗訴無月かな           宮城陽子

  紙銭をたっぷり焚いて魂送り          宮里 晄

  ちちろ歌え黄泉の師の魂和したまふ       脇本公子


 岸本マチ子(きしもと・まちこ) 1934年11月29日~2023年7月29日、群馬県伊勢崎市生まれ。



       撮影・中西ひろ美「山茶花にあらずと固き蕾かな」↑

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