渡辺信子「落ち蟬のごとくカラリと逝かれしと」(第55回「ことごと句会」)・・


  本日は、第55回「ことごと句会」(於:歌舞伎町ルノアール新宿区役所横店)でした。

兼題は「樹」、通常の出句に加えて、らふ亜沙弥の追悼句一句持参(選句の対象とせず)。

以下に一人一句を挙げておこう。


  冬夕焼け今日の辛苦を燃やす色       金田一剛

  寒林の樹が樹と交わす密(みそか)ごと   渡辺信子

  極彩の聖樹眠らぬトー横キッズ       渡邊樹音

  ポケットのない人冬の月の下        武藤 幹

  寒鴉曇りガラスのよく響く         照井三余

  ほっほっほっ今川焼をジャグリング     江良純雄

  雪隠のひしひし迫る重き雪         杦森松一

  樹にしるす恋の未完という言葉       大井恒行

――らふ亜沙弥追悼句――

  奔放な句を焼き付けられた亜沙弥       江良純雄

  御前(あなたさま) 紫苑のリースで御御送り 金田一剛

  独り呟く夕霧の永き床            照井三余

  妻も吾(あ)も ともに恋した冬薊      武藤 幹

  紫の絹の帳や寒昴              渡邊樹音

  紫の風一陣のノーモアブルース        渡辺信子

  両腕で抱いてごらんと らふ亜沙弥      大井恒行


 次回は、2月17日(土)、正月はお休みです。



★閑話休題・・らふ亜沙弥「抽選で当たる漢(おとこ)や枇杷の花」(「つぐみ」No、214より)・・


 らふ亜沙弥つながりで、「つぐみ」No、214(俳句集団つぐみ・つはこ江津)、「追悼 らふ亜沙弥」は、北大路翼「思い出をちょっとだけ」、わたなべ柊「往きて還らず――紫の人」、田尻睦子「紫未だ全宇宙の――らぶちゃん(・・・・・)……」。評論に外山一機「旧派の再検討」。「俳句交流」のページは三上泉「冬の芽」7句とミニエッセィ。ともあれ、本誌本号よりいくつか句を挙げておこう。


  だんだらぽっち駄駄羅八重の雲      三上 泉

  愛憎ノ愛//七重/八重/雪積んで     田尻睦子

  彩濃くす紫式部 亜沙弥逝く        津野丘陽

  蟷螂が蟷螂を喰うしずかな午後      つはこ江津

  棄ててきた町にも柿の照り返し      夏目るんり

  一遍・芭蕉一期五十年とはあきかぜ     西野洋司

  線路の芒笑っているよないないよな    ののいさむ

  誰にでも尾を振る犬と金木犀        蓮沼明子

  階段がこころのようでベニバナボロギク   平田 薫

  しぐれ忌やアンモンサイトの渦を巻く    八田掘京

  石榴の実鬼とじこめられているような    渡辺テル

  曼殊沙華 水の都のヴォドニーク     わたなべ柊

  装甲車二台行き過ぎ冬ざるる        有田莉多

  罪深き契りポインセチアの赫        井上広美

  線香花火二本の距離が縮まらぬ       入江 優

  冥約の石の方舟 沖泊り         打田峨者ん

  湧き水は龍の口から万年青の実       鬼形瑞枝

  足を突くフィッシュセラピー神の留守     楽 樹

  新宿の密漁地区や冬の月          高橋透水



       撮影・鈴木純一「雪囲ここではなくて何処か遠く」↑

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