佐藤りえ「約束を投げ入れられて燃え上がる亡命詩人の郵便受け(メイル・ボックス)」(『チメイタンカ』)・・
『チメイタンカ』(編集・発行 花笠海月)、その「編集後記」に、
2023年に50歳になる歌人の作品集をお届けします。50歳とは数えでもいい、くらいのゆるいものです。(中略)
参加しやすいかたちを模索した結果、再録可の作品集となりました。そして、みなさんの過去の話はあまり聞いたことがないのです。そろそろ少しくらい聞いてもいいんじゃないかということで「25年前のことを一とつに語るスレ」を企画しました。
とあった。ともあれ、一人一首を挙げておきたい。
「わたしも!」と言われたらさてどうしよう「いいね!」のように指たてようか
井上久美子
火の中に溶かしてしまった銅板の花は傷にて描かれた花 遠藤由季
その椅子は片付けないで 置いておいて 誰が座っているかは秘密 佐藤りえ
食欲は明日への扉 食欲は死への階段 食欲は私 しんくわ
とけてゆく氷やさしくとっぷりと思惟をささえる夜が明けるまで 髙橋小径
すきとおる白菜スープに映る顔、顔をレンゲで掬って口へ 竹内 亮
渦をまく時間を這ひて夜もすがら葉をかじりたりまひまひつぶろ 田中 泉
アサギマダラ旅する蝶は毒むすめふわりとゆけよこころのままに 富田睦子
歌作らんと広げし紙に数行のカヌレのレシピメモしていたり 永田 淳
そしてわれらはまた五月をむかへる
身体をゆらす風すぎゆきにけりさつきまいさう薔薇屹立す 花笠海月
粛清ののちの景色に似て白いエリカの花が埋め尽くす丘 松野志保
コロナにもウクライナ情勢にもふれず手紙書くただ桜を待つと 吉村実紀恵
各歌人のエッセイのテーマは「50歳のころの歌集・歌について」で、それぞれに興味深い。皆さんは、愚生より四半世紀は若い人たちである。25年も歳の差があると、そこには、すっかり新しくなった感受性があるようで、少し複雑な思いが生じる。それでも、エッセイの中に、馬場あき子、小池光、斎藤史、森岡貞香、高野公彦、田村雅之、篠弘、田島邦彦、福島泰樹、小川太郎、寺山修司、あるいは、若い宇田川寛之などの名を見つけると、同時代を過ごしたあれこれを、つい思い出してしまう。
芽夢野うのき「おなもみをお尻にひとつシャルウイダンス」↑
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