照井三余「びしょ濡れの老人荒涼の地下」(第53回「ことごと句会」)・・


 本日、10月21日(土)は、第53回「ことごと句会」(於:新宿区役所横店ルノアール)だった。いつものメンバーに加えて、飛び入りで遠路九州の方の参加者があった(20年ぶりの句会参加らしい)。兼題は「実」、雑詠3句、合計4句。以下に一人一句を挙げておこう。

  水溜り大きくなりて秋の月          照井三余
  後れ毛の一筋もなし祭り髪          渡辺信子
  燃えさしのごとく船ゆく冬夕焼       野木まりお 
  貫禄の有る無し案山子すずめ評        武藤 幹
  行き合いの空術(すべ)無くでんと陸(みち)の奥(おく) 金田一剛
  虫の音のために灯を消す父の部屋       渡邊樹音
  秋の灯の零れる石の無言劇          江良純雄
  見るたびに思いめぐらす月の裏        杦森松一
  実(じつ)のところ彼岸花は何も申しません  大井恒行

 次回は、11月18日(土)、於;新宿区役所横店談話室・ルノアール。




★閑話休題・・和田久太郎(酔峰)「もろもろの悩みも消ゆる 雪の風」(『黒旗水滸伝』より)・・

 竹中労著・かわぐちかいじ画『黒旗水滸伝(大正地獄篇 上・下巻)』(皓星社)、解説は上巻が栗原幸夫、下巻が井家上隆幸。実務者「あとがき」に夢幻工房とある。その解説に、


 当初、第一部「大正地獄篇」、第二部「昭和煉獄篇」、第三部「戦後浄罪篇」という三部構成で構想されたこの作品は、結局、第一部を完成させただけで終わったが、しかしこの「大正地獄篇」だけでもこ国の「過渡期」の世情とそこに生きる人びとの雰囲気をなまなましく今日に伝えることに成功したと言えるだろう。


 と記しており、竹中労は、巻末の「第五十三回/大団円/わが闘病の記」に、


 京太郎・激痛をこらえて、最終回のペンを走らせている。(中略)

…‥連載中「事実と違うのではないか」というご指摘を、度々ちょうだいした。それはおおむねいわゆる“文献“に依拠したクレーム、あの書物にはこうある、この記録ではこなっているというものであった。(中略))

 文献や記録は死んだ文字だから(・・・・・・・・)、「劇画」で描いているのダ。つまりデータをふまえた、創作なのである。さよう作者の勝手でしょ。


 とあった。ここでは、本書中のほんの少しの詩歌作品を紹介しておきたい。


 春三月、縊(くび)り残され花に舞ふ      大杉 榮

 白鋼で身を売る夜の寒さかな         芥川龍之介 

 限りなき 時と空との/ただなかに/小さきものの何を争ふ   管野スガ

 ぬばたまにほのと浮べる辻占の紅提灯を見つめて答えず    和田久太郎

 自由廃業で廓は出たがソレカラナントショゆき場のないので屑ひろい~ 添田啞禅坊 

 

 竹中労(たけなか・ろう) 1930年~1991年、東京生まれ。

 かわぐち かいじ(かわぐち・かいじ) 1948年、広島県尾道市生まれ。



        芽夢野うのき「行って帰ってまだ紫蘇実の青き」↑

コメント

このブログの人気の投稿

救仁郷由美子「遠逝を生きて今此処大花野」(「豈」66号より)・・

小川双々子「風や えりえり らま さばくたに 菫」(『小川双々子100句』より)・・

福田淑子「本当はみんな戦(いくさ)が好きだから握り締めてる平和の二文字」(『パルティータの宙(そら)』)・・