小池義人「エッシャーの水の自在や小鳥来る」(『星空保護区』)・・


  小池義人第二句集『星空保護区』(山河俳句会)、その「あとがき」に、


 (前略)私も八十歳を過ぎて人生の残り時間を考えるとあといどのくらい俳句を作っている時間があるだろうかと考え始めていた。

 多分最後になるであろうこの第二句集を編んで定年後の豊かな時間を与えてくれた俳句という文芸と、俳句を通じて知り合えた師や友人たちに感謝しすでに生活の一部ともなっている自身の俳句を記録しておこうと考えたのである。


 とあった。集名に因む句は、


  ふるさとは星空保護区霜むぐら     義人


 であろう。ともあれ、集中より、いくつかの句を挙げておきたい。


  一切を拒否して毛虫焼かれけり     

  シャボン玉水に軽重ありにけり

  永日やキリンの首のよく伸びる

  白地図の折目どおりに紙魚走る

    松井国央師の死

  風鈴の鳴らずタクトの止まりけり

    髙野公一氏の死

  夏雲雀残るは風の音ばかり

  野分すぐピクトグラムの非常口

  母と手が離れ八月十五日

  少年の埴輪の眼窩秋深む

  露の世の時間の中に閉じこもる

  マネキンがしているように襟立てる

  コウキチはもう走れませぬとろろ汁

  死後のこと加筆しておく新日記


 小池義人(こいけ・よしと) 1942年、山梨県生まれ。



★閑話休題・・「秋の歌よみ展」(於:ギャラリー STAGE-1/~10月21日・土まで)・・

                  市原正直氏↑


 本日午後,夕刻までには帰宅するつもりで、思い立って「秋の歌よみ展」(於:ギャラリー ステージワン)に出掛けた。会期は残り、10月21日(土)12時~18時30分(最終日16時)まで。俳句・川柳・短歌・回文・絵手紙など、参加者は21名。ちょうど市原正直氏が在廊されていた。出品の中から以下に愚生の知己の人のみになるが挙げておこう。


  思い出にあおられて返事する月         市原正直

  スタントの背中から落ち冬の川    藤田三保子(山頭女)

  星充満の部屋私はワイングラス         夏石番矢 

  コスモスを五歳はからころと過ぎる       鎌倉佐弓

  砂のないシーラカンスの砂時計         乾 佐伎

  にんげんけっかんどらむかん          野谷真治



           鈴木純一「のこぎの千の眼とあう樵かな」↑

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