川名つぎお「身のどこかなお未使用の夜長あり」(第158回「豈」東京句会)・・


  本日、9月30日(土)は隔月開催の第158回「豈」東京句会(於:白金台いきいきプラザ)だった。体調を崩された方もいらっしゃって、小人数の句会となった。とはいえ、全句にわたって合評が続き、それはそれなりに充実した会となった。

 以下に一人一句を挙げておこう。


  あの場所は母の日和や馬肥ゆる       小湊こぎく

  名月や三半規管のゆるみおり         早瀬恵子

  言の葉は葉群の歯切れさわやかに      川名つぎお

  地虫鳴く誤訳だらけの国富論         川崎果連

  秋晴れや紀元前よりマンカラカラハ      大井恒行


 次回は11月25日(土)は忘年句会(於:インドール、白金高輪駅すぐ)で、第8回攝津幸彦記念賞のお祝会も兼ねる。



★閑話休題・・鈴木しづ子「■の葉に古知野の風のわたりけり」(「なごや出版情報」第9号より)・・


 「なごや出版情報」第9号(問い合わせは、風楳社まで)、の巻頭特集は「名物書店『ちくさ正文館』が消えた/谷口正和社長を直撃」。そして、本誌の記事中、武馬久仁裕(黎明書房)「鈴木しづ子拾遺⑥」に、


  ■の葉に古知野の風のわたりけり  しづ子

 おそらく、しづ子が、名鉄の犬山線で名古屋へ行く途中の古知野の辺りを題材にしたのでしょう。古知野は今の江南です。■は全句をまとめた方が判読できなかった字です。私は■には桑(・)が入ると考えています。古知野の辺りは養蚕の盛んな所でしたから。「桑の葉に古知野の風のわたりけり」となります。古知野は東風(こち)に通じます。春に吹く東風を面影に持つ古知野の句です。(中略)

 古知野の句があれば、犬山線の句があってもおかしくないと思っておりました。犬山ゆかりのしづ子ですし、彼女が住んでいた那加町(現・犬山市)から名鉄で鵜沼を経て、犬山線で名古屋に出れば当然犬山橋を渡るからです。四句ありました。(中略)

  橋わたる七夕さまの夜の電車    しづ子

 昭和二十七年の『樹海』十月、十一月号に載った句です。(中略)

 しづ子もまた、この秋、カムパネルラのようにどこかへ行ってしまいました。

三十三歳でした。その後は誰も知りません。


 とあった。 



     撮影・中西ひろ美「きちきちと跳ぶやまだ跳ぶ草の丈」↑

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