宮本素子「新宿アルタ前の雑踏星の恋」(『ミニシアター』)・・
宮本素子第1句集『ミニシアター』(ふらんす堂)、序は、小川軽舟。それには、
(前略)素子さんの俳句は都会的である。都会の公園でコゲラを見つけるように、都会に暮らす毎日の生活の中で四季の移ろいを感じとり、俳句の材料を見出す。こんなところにも俳句の材料があったかと膝を打って感心する楽しみが素子さんの俳句にはあふれている。(中略)
この句集を読む楽しみは、ミニシアターに通う楽しみに似ている。映像と音響とストーリーの迫力で観客を圧倒する大作より、観客の生き方にそっと寄り添うような佳品を揃えてファンを迎える。ミニシアターを出る客は、いつもと変わらない世界がいつもより親しみを増して見えることに気づくのである。
とあり、また、「あとがき」には、
広告の仕事をしていた時に資料として手に取った歳時記。それが俳句との出会いでした。日本語には、季節を十七音にする要としての言葉が、こんなにもあったのかと圧倒され瞬く間に魅了されてしまったのです。
とあった。集名に因む句は、
秋の夜のミニシアターのロビーかな 素子
である。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。
落し文掌に転がして地に戻す
割勘に集まる小銭秋暑し
犬蓼やむかし女衒の来し畷
フェラーリが女を拾ふ冬木かな
梟の細目や父を諫めし日
偉くない順に捺印更衣
火蛾舞ふやボクサー打たれても前へ
字幕より長き台詞や漱石忌
着陸の前の旋回夏隣
風あるかなきかの午後や心太
雪雲の迫れるハーフタイムかな
春の雪辞令に広き余白あり
かまどうま前世は魔女に仕へしと
宮本素子(みやもと・もとこ) 1964年、栃木県足利市生まれ。
★閑話休題・・「YO-EN with 菊池」(於:曼荼羅2)・・
昨夜は、「YO=EN with 菊池琢己」(於:曼荼羅2)に出掛けた。吉祥寺丸井の斜め前地下にある曼荼羅には、30年前ほどから、ほとんどは福島泰樹の短歌絶叫コンサートのために、その初期以来、何度も行っているが、曼荼羅2は初めてであった。楽しませていただいた。いつもの国立のギャラリービブリオの十松弘樹、生野毅にもお会いした。ヨーエンの、題名は、あまり覚えてはいないが、「魂ふたつ」「ラストダンス」は幾度聞いても良い。
芽夢野うのき「いつも真実は人の数だけまつり花」↑
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