岡山弘親「ケロイドの俺は黙って生きている」(「小暮沙優 原爆句集『広島』を歌う」より)・・

  


 昨夕、8月26日〈土)は、東京北区滝野川会館小ホールで行われた「小暮沙優 原爆句集『広島』を歌う/朗読モノオペラ」(主催・アクションつなぐ)に出掛けた。数か月前、アクションつなぐの島田牙城に、チケットの予約を申し込んだのだが、改めて予約の入場証を見たら、「チケットNo,東 001番/全席自由」とあったので、驚いた。というのも愚生は、こうした催しには、だいたい、いい加減で、申し込みは遅れ気味なのに・・・と。たぶん、一番とは生涯初めてのことであろう。久しぶりに会った牙城も元気そうだった。打ち上げの会にも少し出席して、牙城にウーロン茶ですか?と尋ね、注文しようとしたら、もちろんと言って、生ビールを飲んでいた。愚生はもちろんノンアルコールビール。とはいえ、知り合いと言っても数年ぶりに会う人ばかりで、顔と名を覚えるのが苦手な上に、耄碌もすすんでいる愚生では、きっと失礼した人も多かったにちがいない。





 ところで、受付で創刊されたばかりの雑誌「カワズ」」第一号(株・スタジオペガサス)の表紙に「本が紡ぎ出す繋がり」というのにも惹かれたが、小暮沙優の記事「戦争の記憶を次世代に伝えていくために」が載っているというのでカワズ(買わず)ではなく、つい買わされてしまった。以下は、「朗読モノオペラ つなぐ パンフレット」よりの句をいくつか挙げておこう。


  屍の中の吾子の屍を護り汗だになし    和多野石丈子

  みどり児は乳房を垂るる血を吸へり      西本昭人

  蟬鳴くな正信ちゃんを思い出す        行徳功子

  廃墟すぎて蜻蛉の群を眺めやる        原 民喜

  爆心地で汗する無数の黙(もだ)に合ひぬ  相原左義長

  原爆忌をとこも悲し全裸の図         飯田米秋

  流燈に顔重ねあふ孤児その兄         大堀正毅

  肌脱ぎつお母さん熱いと言ひ遺す       岡藤静翠

  原爆に焼けし乳房を焼けし子に        川上政子

  恋秘めてケロイド秘めてセルを着る      山縣虚空

  原爆地をたやすくうたう気になれないでいる 吉岡禅寺洞 

  ひろしまの蝉の木夜は少年棲み       伊達みえ子 

  人ゆくゆゑ行かねばならぬ皮ひきずり     小崎碇人

 

 句集『広島』「おわりに」をパンフレットより再録しておきたい。


 あの日を永遠にとどめよう。忘れ去られることのないように――。

 忘却が生む愚かな反復によって、ふたたび、地表の亀裂に、おびただしい血が流しこまれるることのないように――。

 消えやらぬ数々の戦慄の記憶と、深い深い慟哭を、ここに刻みこんで遺そう。

 同時に、力強い平和へのうたごえを、ここにぎっしり詰め込もう。

 とめどない涙も、ここにひとつの底光る決意として象嵌するのだ。

 平和のために――。 


 小暮沙優(こぐれ・さゆう) 東京都生まれ。(2018年にソプラノ・ドラマティコに転向。ソプラノのなかでも最もドラマチックで、かつ滑らかな、日本人にはなかなか難しいといわれている稀少な声質です)




★閑話休題・・第34回夏の朗読会「あの八月の空の下で」(朗読グループ・八重の会)・・



 朗読つながりで、愚生の本日は、朗読の会の梯子となった。こちらは府中市の自主グループ「八重の会」の会の夏の朗読会(於:府中市中央文化センター・ひばりホール)。きすげ句会の仲間で、長年にわたって朗読の会を続けておられる方がいて、楽しませていただいているのだ。来年3月3日(日)も春の朗読会を開催されるという。

 因みに、朗読「あの八月の空の下で」は、峠三吉作「仮繃帯所にて」などを含み、テーマは「ヒロシマ」と「ナガサキ」であった。構成は楯岡眞弓、後援に府中市と府中市教育員会。



撮影・鈴木純一「キミを見たことは誰にも言わないさこれでサヨナラ別々に死ぬ」↑

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