其角「詩あきんど年を貪ㇽ酒債(サカテ)哉」(「江古田文学」第113号より)・・
「江古田文学」第113号(発行:江古田文学会・発売:星雲社、税込1200円)、特集は「連句入門」。全編連句に関する記事で構成されている約350ページに及ぶ大冊。大きな目次だけでも挙げると、1「『連句入門書』入門」、2「『連句比較論』入門」、3「『連句実作』入門」、4「『連句イラスト』入門」。5「『連句鑑賞・評釈』入門」。
巻頭の佐藤勝明「特別講座『芭蕉連句入門書』入門」と佐藤勝明・浅沼璞・高橋実里・日比谷虚俊「座談会『芭蕉連句入門書』入門」は、愚生のような連句初心のような者にも、分かりやすくて面白く読める。色々、引用紹介したいところはあるが、直接、本書に当たられれたい。ここでは、浅沼璞創案・「オン座」六句・六箇条」(最新版)のマニフェストをまず、挙げておこう。
① 一連六句を基本単位とし、やれるところまで連を継ぎ足す(序破急を鑑み、三連以上を理想とする)
② 第一連は基本的に歌仙の表(おもて)ぶりに則る(発句以外は宗教・恋愛・述懐・病死・闘争・固有名詞など不可。また短句下七の四三調も第一連のみ不可)。
③ 途中、自由律の連を任意に定め、長律句(二十音前後)と短律句(十音前後)を交互に付け合う。
④ 月・花・恋に加え、「六句」の洒落として氷・石(岩)・ロックミュージックを任意詠みこむ。
⑤ 四季の詞および④項を含む全ての題材において句数は一~二句、去嫌(さりきらい)は三句去りとする(これをワンツースリー・ルールと呼ぶ)。
⑥ 最終連の予測がついたら、五句目までに花の座をもうけ、挙句でわざと打越し、一巻のエンドマーク(終止符)とする。
と掲げられている。
あと一カ所、「俳人による『両吟』入門」の座談会(令和五年三月四日)の中から、以下に、「オルガン28号」の自由律の連を再掲載しておこう。
二重まぶたの三島由紀夫が四ッ角に立ち 田島健一
村八分聞く 浅沼璞
登山鉄道スイッチバックに入つて雹 宮本佳世乃
とまどふすべりひゆ 鴇田智哉
神様のやうなるごときみたいに神様死ぬ 福田若之
寶船をはみだし 健一
また、ブログタイトルにした句、其角「詩あきんど年を貪ㇽ酒債哉(しあきんどとしをむさぼるさかてかな)」について、二上貴夫「虚栗集『詩あきんど』の巻」は、
※発句。「詩あきんど」とは詩を売って生業にしている者をいう。駅頭で「わたしの詩集を買って下さい」と売っている詩人をイメージするが、ここではそうではなく、俳諧好きの大名やらお大尽やらのお屋敷に出入りして、何がしかのお金を頂き生業にしている俳諧師のこと。(後に其角は大名をスポンサーに禄を食むことになるが、この『虚栗』によって宗匠立机した当時は、貧乏の身)である。その俳諧師も年の暮れ、酒の借金で首が回らない。
と記している。
撮影・鈴木純一「ひめ昔よも聞かざらめ野辺の道ヒメムカシヨモギグサ折るるとは」↑
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