小澤實「狸入るぞ鋼鉄の扉をしかと閉めよ」(「澤」8月号より)・・

 

 「澤」8月号・創刊23周年記念号(澤俳句会)、特集は「令和4年の澤俳句」。まず、「祝・受賞 相子智恵/第四十六回俳人協会新人賞受賞『呼応』」の相子智恵「句集づくりのススメ」に、論は町田無鹿「第一の相子智恵になるために」、「祝・受賞 木内縉太/俳人協会第六回新鋭俳句賞準賞『砂上の文字』、論は金澤諒和「圧倒的な熱量と静かな優しさ」、「祝・受賞 池田瑠那/第二十四回山本健吉評論賞『閾(しきい)を視る、端(はし)に居る 上野泰が詠む閾と縁側』」、論は村越敦「一微粒子」。さらに、特集は、西村麒麟「令和四年の澤の俳句 『澤』四十句を選ぶ(創刊~令和三年)」と小澤實との対談「いたるところ澤宝あり/澤四十句に読む澤の二十三年」。その他、「令和四年の澤の俳句」の論に、角谷昌子「新しみを求めて」、生駒大祐「打診すること・幸福について」、岩田奎「面白がらない」、坂西敦子「季題の窓から ホトトギスが澤を読むと」、大室ゆらぎ「瑞々しい実感」、喜心「時間の波の煌めき」、中村麻「虚を衝いて」、中山雅弘「変わっていくものと変わらないもの」、嶋田恵一「新しい風 新しい澤」、沖としこ「澤の煌めき」など。他に、第23回澤潺潺賞は山口方眼子「杭」(論考は相子智恵「余白とは白い形」)と余村光世「砂子筒」(論考は馬場尚美「時空を超えて」、第23回澤新人賞は吉川千草「女の国」(論考は村上佳乃「残る白鳥」)、第10回澤叢林賞は嶋田恵一「辞世」(論考は古川恵子「きらきら」)、さらなる特集は「小澤實『瓦礫抄』を読む」に、沼野充義「小さな命から雪の魔女まで」、柴田元幸「分身の術」、荻原裕幸「蛍袋を探して下さい」、平岡直子「震える、そして震えないもの」、安里琉太「自照させる形式」、町田無鹿「日々を構成するもの」など、さすがに23周年記念号と称するに充実の号である。ともあれ、以下に、本号より、アトランダムになるがいくつかの句を挙げていきたい。


  ニッポニア・ニッポン我に日本忌       高橋睦郎

  鳥残したる蟇の頭や蟻びつしり        小澤 實

  ローリング・ストーンズなる生身       榮 猿丸

  金魚の口伸びたり糞をかすめたる       相子智恵

  つちふるや茶筒に飼うて管狐         池田瑠那

  蛇穴を出て見ればまた戦の世         押野 裕

  屋上に西日や自殺なんてバカ         梶等太郎

  侵攻進む目刺の反(そり)に滲む青      川上弘美

  九人出て二人働くどぶさらひ         村上佳乃

  モツ煮屋のルール酒気帯び入店不可     望月とし江

  コロナ陽性即学級閉鎖雪催          金澤諒和

  「んじゃ」「おう」と代はる水番午前二時  原島千代子

  海の家ことごとく消ゆ杭残し        山口方眼子

  無言館に遺品の砂子筒や夏          余村光世

  デコトラの屋根に腰掛け神の旅        吉川千草

  流れ来てリカちやん人形簗の上        嶋田恵一

  人道的兵器つて何春の泥         東徳門百合子



★閑話休題・・春風亭昇吉独演会「最初で最後の師弟リレー」・・



 昨夜、15日は、台風は関東を逸れたものの、時折激しい雨が降り、かつ、お盆のど真ん中の春風亭昇吉独演会(於:中野ZERO小ホール)であった。師の春風亭昇太との「最初で最後の師弟リレー」、演目は「お初徳兵衛」で,通しての昇太「船徳」・昇吉「浮名の桟橋」。春風亭昇吉は、コロナ禍前までは、月々に開催されていた飲み食いしながらの遊句会の仲間、従って昨日は、その時以来世話になっている武藤幹と隣の席で共に楽しんだ。
 開演早々にクラウドファンテングへの支援願い(上掲写真)があり、それには、

   UD落語絵本プロジェクト/「触れる落語の絵本を作りたい!」
   目標金額300万円/期間2023年8月7日~9月30日

 このプロジェクトは私が中学時代にボランティアで行った落語会の思い出がきっかけです。とある盲学校で落語会しました。耳を頼りに生きている子どもたちから「おもしろかった!」「声が聴きやすかった!」と言われ、涙が出るほど嬉しく、この時の思い出が私の大きな心の支えとなっています。
 そんなことがあって以来、私は「誰しもが楽しめる落語の絵本をつくりたい」という夢を持っていました。今、たくさんの方の力を借りて、落語「まんじゅうこわい」を題材にした「ユニバ―サルデザイン落語絵本(UD落語絵本)の制作を進めています。出版は年内の目標にしており、初版は全国の点字図書館や盲学校へ寄贈させていただく予定です。(中略)
 この絵本は落語文化の普及のみならず、社会の見えないバリアを取り払うきっかけになると確信しています。皆様のご支援は絵本の制作資金や寄贈に係る費用に使わせていただきます。
 どうか皆さまより温かいご支援をいただければ幸いでございます。ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

とあった。



       撮影・中西ひろ美「冷蔵庫きょう一番のもの入る」↑

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