澤好摩「祈りとは海を曇らす吐息だらう」(「鬣TATEGAMI」第87号より)・・


 「鬣TATEGAMI」第87号(鬣の会)、特集は「第21回『鬣TATEGAMI』俳句賞」の水野真由美「前川弘明句集『蜂の歌』を読む―〈生(せい)へととってかえす(・・・・・・)足音」、吉野わとすん「小説家と俳人とー魚住陽子句集『透きとほるわたし』を読む」、林桂「復本一郎『正岡子規伝』ー新俳句草創期の青春群像」、上田玄「『混沌の恋人(ラマン)ー北斎の波・芭蕉の興』恩田侑布子ー天空の書斎・猪のヌタ場」。そして、「澤好摩の百句を読む」に「戦火想望俳句の現在」。追悼者は「秦夕美・森田廣・黒田杏子・齋藤愼爾」。その他、エッセイ、書評ありなど、読みどころ満載である。ともあれ、ここでは、澤好摩の百句(深代響抄出)から、いくつかの句を挙げておこう。


  ものかげの永き授乳や日本海       好摩

  空たかく殺しわすれし春の鳥

  ピストルを極彩色の天へ撃つ

    長岡裕一郎急逝

  影まで酔ひ月夜の駅の階に消ゆ

 

  濤(なみ)を歯(は)となし

  顕(た)つは

  白神(しらがみ)

  白鯨(しろくぢら) 



       「ちっちゃな時から」(『夢で逢えたら』57P)↑

★閑話休題・・松原令子写真集『夢で逢えたら』(鬣の会)・・



      荒木経惟『センチメンタルな旅/冬の旅』(新潮社)より↑

             The Shadow of Your Smile ↑


 松原令子写真集『夢で逢えたら』(鬣の会)の各写真のタイトルには、それぞれ、楽曲名が添えられている。「夢で逢えたら」には、「作詞・作曲 大瀧詠一」とある。ユーチューブでそれを聞いた。懐かしさを誘った。色々な歌手がカバーをしていた。歌は「夢で逢えたら 素敵なことね あなたに逢えるまで 眠りつづけたい~」と始まる。「ちっちゃな時から」は、作詞と唄は浅川マキ、作曲はむつひろし、とある。本集には堀込学「松原令子さんのこと」、水野真由美「いつかどこかの町へ―あとがきに代えて」とさらに、巻末には「鬣TATEGAMI」誌への発表作品リスト(  )内は本書収録頁」、そして、松原令子自身による「入院日記」など、実によく行き届いた一集となっている。著者の紹介欄は、彼女が「鬣TATEGAMI」誌に創刊号から最期の写真に掲載されていたものがそのまま記されている(生、没年以外は)。言えば、松原令子写真集刊行員会・鬣の会の皆さんの友愛がもたらしたかけがえのない一集である。


 松原令子 東京生まれ。勝っても、負けても阪神ファン。最初に覚えた歌「オトミサン」「ムーンライトセレナーデ」。写真のタイトルは「スタンダード」。勝手に師と仰ぐはアラーキー。/1952年4月7日~2014年5月10日



撮影・中西ひろ美「文芸の坂の上にはまた坂がどんどん急になるや愉しき」↑

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