野名紅里「片かげり目を褒められて目を逸らす」(『トルコブルー』)・・

 

   野名紅里『トルコブルー』(邑書林)、帯の惹句に、


 鳥にもなれる 魚にもなれる/いや/獣にだって/滝にだってなってみせよう

 流れるように/折れることなく/ことばをつむぐ/時代の荒波の中

 俳句に一輪の花が咲く


 とある。帯の背には「ひたむきに!!初句集」。「あとがき」は今時、珍しくシンプルである。以下に全引用する。


 好きな色の句集ができてうれしいです。

 支えてくださったみなさまのおかげです。本当にありがとうございました。

 これからも俳句を書いていきます。


 とあった。集名にちなむ句は、


  百貨店にトルコブルーの日記買ふ    紅里


 であろう。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  空蟬のこはれやすきをこはさずに

  廃校の記事を案山子に着せてゐる

  人のかたちを知るために毛糸編む

  一葉が蛍数匹隠しけり

  滝の奥より滝落ちる音のして

  永遠や波を忘れて泉ある

  山茶花と意訳に近いあなたの絵

  雪が降るのかわたくしが昇るのか

  眼裏の赤に似てゐる薔薇を探せ

  鰰はとつくにずつと踊つてゐる

  木の家に傷が多くて夕朧

  

 野名紅里(のな・あかり) 1998年生まれ。



   撮影・芽夢野うのき「むかしむかしいったことあり蓮浄土」↑

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