河村正浩「夕焼の空まだ燻(いぶ)す重信忌」(『爺爺の俳句ごっこ入門』)・・・
河村正浩句集『爺爺の俳句ごっこ入門ー楽しい俳句 非真面目な俳句』(やまびこ出版)、その「あとがき」には、
初めて句集を出した時、俳句関係者以外に友人や職場の仲間にも贈呈した。その方々の感想が、
・読めない漢字が多い。
・意味の分からない季語や言葉がある。
・旧仮名や文語に違和感がある。
・分からない俳句が多い(切れ字や切れのある句らしい)。
・面白くない。
そして、「申し訳ないが、途中で詠むのを止めた」であった。(中略)
その結果、句集は娯楽性に乏しいからではないかという結論に至った。そこで、娯楽性を前面に、これまで書き溜めていたものの中から句を選び、読みがたいと思われる季語や漢字にはふり仮名を付け、必要に応じ簡単な説明又は解説を付させていただいた。
俳句愛好者の中には俳句を侮辱していると思われる方、不真面目な句集と思われる方もあるだろう。だが、私は不真面目というより非真面目な句集と思って頂きたい。同じフレーズを繰り返し、あたかも俳句詩?と言わんばかりの作品や連作などもあるが、先ずは俳句に縁のない方々に読んで頂けたらという思いからである。
なお、私は本来旧仮名遣いであるが、本書については現代仮名遣いに改めた。
とあった。巻末には、「実況中継/俳句の生まれる現場ーとりあえず五七五ー」が収載されている。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
野火匂う風の中から中性子(ニュートロン) 正浩
少し前生きていた蠅蠅叩き
くちなわぐにゃぐにゃ狗奴国(くなこく)の闇を負い
この星の闇の深さよ寒怒涛
稲穂祭狐の嫁がやって来る
み熊野野の沖の浄土へ花筏
寒禽(かんきん)のこえ身ほとりに仏たち
ほうほたる黄泉平坂(よもつひらさか)から招く
亡き妻の夢はいつしか雪女郎
パロディー(松澤昭先生)
山笑うやうに笑へぬものかしら 昭
山眠るように眠れぬものかしら 正浩
竹皮を脱いでやさしき風の中
花万朶(ばんだ)爺爺(じいじい)の朝からのらかわく
のらかわく・・仕事をなまける。遊蕩する。
魚は氷(ひ)に水のいろはをなしくずす
いろは・・物ごとの初歩。
河村正浩(かわむら・まさひろ) 昭和20年、山口県下松市生まれ。
撮影・中西ひろ美「夏萩の友だちとして自己紹介」↑
コメント
コメントを投稿