植木紀子「少子化や優先席に子供たち」(現代俳句協会「金曜教室」)・・

 


  本日、7月21日(金)は、昨年度から通算14回目の現俳「金曜教室」(於:現代俳句協会会議室)だった。課題は、無季の句2句持参だったが、それを忘れて有季の句もまじった。それも愛嬌というべきか(出題者の愚生自身も昨年は失念したことがある)。句会の方は甲乙つけがたい句が並んだので、各句にまんべんなく点が入った。その他、簡単な参考資料としてコピーを配布した。一茶・虚子にはじまる「無季俳句セレクション30」(「俳句界」2011年10月号)、『加藤楸邨全句集』からの無季の作品50数句、季語別『飯田龍太全句集』の「雑」の19句など、その他、伝統派俳人といわれた人たちも結構、雑・無季の句を残しているのだ。

 ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。


  麻酔覚めニュースの声の甘美なる        石川夏山

  目をとじて息をするんだ人になる        武藤 幹

  添い寝して瞼に残すかぐや姫          杦森松一

  線香ばあげて遺影の出来ば言ふ         川崎果連

  落っこちてくるなよ梅雨の神と核        林ひとみ

  やがて廃海トリチウムは泳がない        白石正人

  フェイクニュース巷に溢れ野良の声       宮川 夏

  大吉の御籤に惑ひ今日も暮る          石原友夫

  子守歌の背後にいつも鬼が居る         赤崎冬生

  喫茶去(きっさこ)へ紐育下町(マンハッタン)の旅箪笥

                         岩田残雪

  知らんけど多発性肉芽種症(たはつせいにくげしゅしょう)です

                         村上直樹

  深山に波打つ雨のカーテン           植木紀子

  汝が名鳥子夕日の木々に降りてくる       大井恒行


 8月は夏休みで、次回は、9月15日(金)、当季雑詠2句持参。攝津幸彦偲ぶ会で上映されたVHSのテープをDVDにダビングしたものを観てもらう予定である。



★閑話休題・・DVD 眞鍋呉夫『不戦、だから不敗』・・・


 「金曜教室」の今年度は、句会だけでなく、後半に、これまで、愚生が持っていた先輩俳人の音声データ(高柳重信、高屋窓秋、鈴木六林男、宗田安正、桂信子、三橋敏雄等)を聞いていただいているが、本日は、協会会議室でDVD上映が可能だというので、DVD眞鍋呉夫『不戦、だから不敗』を観ていただいた。その惹句には、

  

 2011年度初秋、私たちは石神井の眞鍋呉夫さん宅を訪ねた。ツクツクホウシがしきりに鳴く午後、眞鍋さんは、文学的出発から現在の社会情勢まで飽くことなく話し続けた。その眼差しは、いつにまにからんらんと力を増したようであった。「不戦、だから不敗」。私たちは明日へ向けた眞鍋さんのメッセージを確かに受け取った。


 とある。その眞鍋呉夫は、この収録の翌年、2012年6月5日に亡くなられている。眞鍋呉夫の石神井の自宅へは、愚生も一度、浅沼璞につれられてお邪魔したことがある。その折、奥様から手作りの漬物など、頂いたことをお覚えている。いつだったか、眞鍋呉夫と正木ゆう子と三人で飲む機会があり、正木ゆう子のことを、しきりに「ぼくにとっての雪女です」と語っていた。眞鍋呉夫が亡くなって、もう10年以上が過ぎ去っている。

 眞鍋呉夫(まなべ・くれお) 1920年1月25日~2012年6月5日。享年92. 



        撮影・中西ひろ美「たわいなく老ゆるも愉し氷水」↑

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