土井探花「薄つぺらい虹だ子供をさらふには」(「現代俳句」5月号より)・・・
「現代俳句」5月号(現代俳句協会)、巻頭に、専務理事・後藤章「『協会に入るメリット』という難問について」が置かれている。現代俳句協会が本年4月より、任意団体から社団法人に衣替えしたことによる、いわば会員増強に関するお願い文のようなものだが、終りあたりで、
(前略)例えば、世の中の俳句が有季定型だけだとか縛られたら、これから俳句を作る人々の将来の表現世界は、閉じられているといってもいいでしょう。
我々は自信をもって言っていいのではないでしょうか。協会が存在するのは「あなたの作り出すどんな形の俳句でもその存在を保証するためだ」と。これ以上のメリットがあるでしょうか。
と鼓舞しておられる。他の論考では、久保純夫「新興俳句逍遥(2)/連作俳句のことなど」が興味深い。ただ本誌本号の記事では、なんと言っても、第40回兜太現代俳句新人賞の作品掲載であろう。受賞者は土井探花(どい・たんか/1976年、千葉県生まれ)「こころの孤島」50句である。「受賞の言葉」の中に、
(前略)混迷の世を生きる一瞬ごとを大切に、病者というマイノリティの心と目線を以て、賞の名に恥じぬよう人生をかけて俳句に精進する覚悟です。兜太先生の仰るようにあらゆる本能と遊びながら。
とあった。作品をいくつか挙げておきたい。
背泳ぎの空は壊れてゐる未来 探花
いつからか無害なはだか草の花
職歴にやまひは書けず水の澄む
野分あと脳は不純をぐらつかせ
寝たら死にさうなあをぞら鶴の鳴く
読初の性感帯といふ活字
水温む飲まねばたぶん死ぬ薬
以下には、新人賞佳作からと本号の中から一人一句を挙げておきたい。
うぐひすや遊具は仮死のままに森 楠本奇蹄
散る銀杏を駆け上がつて空にでも行かうか 蒋 草馬
足裏より虚像となれる敗戦日 加藤絵里子
ささやかれゐたるうさぎのほどけさう 内野義悠
山また山病気の蛇も居るならん 池田澄子
夜の新樹もつとも近き星を容れ 浦川聡子
万緑の一木として戦ぎけり 名久井清流
むかし此処に鍛冶屋があった木槿咲く 松原君代
★閑話休題・・『相撲絵シリーズ』(財・全日本郵便切手協会)・・
『相撲絵シリーズ』(財団法人 全日本郵便切手協会)の解説らしい冒頭に、
相撲絵シリーズ郵便切手は、江戸時代(1600~1867)後半の相撲をテーマに描かれた浮世絵を題材とし、日本の国技である相撲の近世松末における流星の姿を広く内外に紹介することを目的として、昭和53(1978)年7月から昭和54(1979)3月にかけて発行しました。
とある。しかも、中には未使用の切手が見本に収められている。すべては一枚50円だから、使えば現在でも使える。ある御仁からいただいた本?であるが、相撲の歴史、相撲絵の解説が付されている。20ページ強、見本の切手は14枚。頒布値がついていないので、何かの記念品として。非売品配布されたものかも知れない。
撮影・中西ひろ美「いずくにも水を残してゆく春か」↑
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