中村文昭「虎吠えて/ほほえみほむら/とぶ日の出」(「えこし通信」27号)・・

 

「えこし通信」27号(えこし会)、特集は「追悼 詩人新藤涼子」。記事は藤井一乃「新藤さんとの思い出」、チョルモン「詩人新藤涼子先生から受け取ったもの」、中村文昭「薔薇の女(ひと) 詩人新藤涼子讃へ――恋愛する書物・追悼歌十四首—」、新藤涼子インタビュー・聞き手、クリハラ冉「言葉とは何か――私にとって言葉とは」。また、本号は、「哀悼・境節さん」「哀悼・山田兼士さん」「那須邦子さんを悼んで…」など追悼文が多い印象である。その他、「金子みすゞ生誕120周年に寄せて」の本間昌平「ぼくのみすゞ体験」「こどもの国」、クリハラ冉「“みすゞ“生誕一〇〇年に」など。ともあれ、短めの作品のみになるが以下に紹介しておこう。


     愛する「歴程」の詩人草野心平讃と共に

 夢に立つおんなの薔薇の香りきて死んでも生きて生きて咲くのよ   中村文昭


 石炭を      Filling its  desk

 口にちめこむ        wth  lumps

 鶴の居て             A  crane  bird          アミール・オル


 いもうとを蟹座にの星の下に撲つ(寺山修司)

 いもうとを殴った順に下校せよ               二三川練


    自画像                       本田瑞希

 ねむりに落ちる直前の沈黙

 空に散りばめる砕いたダイヤモンドを

 拾い集めては手放して

 私はあのこが捨てたぶどうガムです


       (名前のない女の子のように)                豊原清明

 (名前のない女の子のように)

 私は腰を躍らせて

 風吹く夕暮れを見つめるばかりだ

 今から 過疎の村まで歩く


 (くたびれた若者のように)

 電動剃刀は髭を剃れない

 流れる星の玉座の椅子に座る

 エンぺラーの鼻を私は恐れる


 時々、子どもは大人のように

 砂漠の砂場に倒れ伏し

 心の中で救急車を呼ぶ


 耳を澄ますと冷房の音が

 ゆっくりと眼を開けると私の父母が

 峠の境界に立ち尽くしている  



    撮影・中西ひろ美「さみしいと言えない躑躅屋敷だな」↑

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