大崎紀夫「ひまわりが千/あるいは万//運転手の喉からから」(『3行詩その他100・2020』)・・


 大崎紀夫『3行詩その他100・2020』(ウエップ)、その「あとがき」に、


 昼間、ちょっとの間、ボーツとしているときに浮かんでくるイメージ、言葉がある。多くは、JR埼京線の電車の座席に坐っているときで、それらのイメージ、言葉を手元の手帖などに記してきたが、2021年までのものはすべてどこかへ消えてしまった。

 それで小さなノートを買い、そこに書きとめてみることにした。2022年の1月から12月まで書きとめたものをこの1月に数えてみると、137あった。(以下略)


 とあった。100編に絞って、3行詩とあるが、多くは、1行の空白がほどこされており、詩の形は、高柳重信がたどり着た4行表記の俳句形式に限りなく近い。林桂は、この4行形式の俳句はそのまま、この形を使うことによって、誰でもが俳句として成立する可能性を有している、とみなしていたと思う(あたかも、5・7・5のように)。ともあれ、集中より、いくつかの句を挙げておこう。


  海坂を

  登り下ってゆく


  戦車            紀夫

   

  歩いていくと


  どうしても

  空にぶつかる

   *

  パリの霧


  壁抜け男が

  溺れている

   *

  破船


  鼠

  また海蛇が棲み

   

  星空に

  ボートが浮かび


  月光を吐いている

   

  ひまわりの

  うしろを


  星が飛ぶ


 大崎紀夫(おおさき・のりお) 1940年、埼玉県戸田市生まれ。


 ★閑話休題・・小倉進展「軌跡ー心と糸のメタファー ー」(於:世界遺産・富岡製糸場 西置繭所)・・


 小倉進展「軌跡ー心と糸のメタファー」(於:世界遺産 富岡製糸場 西置繭所、~3月28日(火)まで)、観覧料は無料だが、富岡製糸場への入場料大人1000円、大・高校生250円、小中学生150円が必要。







 先日、かねて行きたいと思っていた富岡製糸場なので、小倉進氏の息女・K女史から案内を頂いたのを機会に、日帰りで、出かけることにした。チラシの主催者の挨拶には、


 (前略)氏の作品は、抽象画でありながらも強い風土性をもっており、大きなキャンパスに自在に描かれた色、形、線には、この土地への畏敬が込められています。(中略)

小倉氏の生家でも、幼い頃には養蚕を行っていたといいます。そんな氏の絵の中に多く登場する、細く白い線―そこには、過去から現在へ、現在から未来へ、連綿といのちをつなぎ続ける“糸“のメタファーを見出すことができるでしょう。


 とあった。


  小倉進(おぐら・すすむ)1951年、群馬県伊勢崎市生まれ。



         芽夢野うのき「午後の風しらじらと身に花辛夷」↑

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