村木まゆみ「春の闇よだかの星が上昇す」(『白い犬』)・・


  村木まゆみ句集『白い犬』(ぶるうまりん俳句会)、著者「あとがき」に、

 

  白い犬は、おばあさんが亡くなってから現れた。はじめは子供たちには見えなかったが、だんだん見えるようになった。おじいさんは、おばあさんが亡くなってから七年間、白い犬と暮らした。おじいさんが亡くなると、白い犬はどこかへ消えた。

                           (絵本『白い犬とワルツを』)


  とあった。集中より、いくつかの句を挙げておきたい。


  青田から日ごと命が立ちのぼる       まゆみ

  野牡丹のひととき風の中風の中

  病棟にも吹きつけている春一番

  ツタンカーメンの心臓どこへ 木槿咲く

  フランスの春節 パンダ笑ってる

  まぼろしの青の世界の魚たち

  音程の揺らいではずれ花の昼

  万緑や全国ホラ吹き競技会

  紫陽花やカゴメ遊びはもうおしまい

  おにごっこ いつかつかまる百日紅

  ジョン・レノンのイマジン 天国はありません

  

 村木まゆみ(むらき・まゆみ) 1951年、東京都生まれ。

 

★閑話休題・・山田千里「月天心 梯子をかけて会いに行く」(「ぶるうまりん」45号)・・


 「ぶるうまりん」つながりで、「ぶるうまりん」45号(ぶるうまりん俳句会)、特集は「山田千里句集『ミルク飲み人形』を読む」、他に、「追悼 三堀登美子」「村木まゆみ句集『白い犬』刊行記念」。また、「豈」の藤田踏青「ぶるうまりん44号寸感」が掲載されている。ともあれ、以下に、本誌より、いくつかの句を挙げておこう。


  ガラス眼みつめる彼方に虚空      三堀登美子

  聖五月地下シェルターに薄明り      生駒清治

  戦争にまき込まれゆく半夏雨       池田紀子

  清貧画家の全霊ろうそくの絵      及川木栄子

  明言は避ける三寒四温かな        瀬戸正洋

  くすりはりすく くすりくすりと冬    普川 洋

  えいえんを ななめななめに なめくじら   塵

  ずれた影無数に連れて夏野行く      齋藤 泉

  ナースコール渇いた月の片手指      土江香子

  小さい老婆小さく歌を唄ってる     村木まゆみ 

  ふらすこにふくらむ春の愁ひかな     芙 杏子

  まくなぎにまた自転車で突っ込んで    吹野仁子

  天空に咲く曼殊沙華は青い        山田千里



        撮影・鈴木純一「千年に1コか春の 泥だんご」↑

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