嶌田岳人「たのしさの残るへこみや紙ふうせん」(『ヴィーナスの唇』)・・


  嶌田岳人第二句集『ヴィーナスの唇』(文學の森)、平成27年冬から令和4年秋まで8年間の句を収める。祝句は河内静魚、


  おもひきり開いて蝶の翔びたてり      静魚


 著者「あとがき」に、


 前句集はある意味自分探しの句集であり、その名『メランジュ』の示す通り統一性のない句の集合体のような句集でありました。本句集は、「季語を愛し親しむ」という前句集からの俳句信条は堅持しつつ、そこからの飛躍をテーマとして編みました。句集名は〈春の闇ヴィーナスの唇開くかも〉より採りましたが、その句自体よりも「ヴィーナスの唇」という言葉そのものがこれらの句群を象徴していると思い名付けたものであります。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。


  競り市にどかんと一本釣りマグロ      岳人

  西行忌風には風のゆくところ

  水のないアクアリウムや冬の街

  みづぎはの音なく退いて潮まねき

  片陰に入つてゆきし犬の舌

  年惜しむ三角ビルの四角窓

  夏の蝶地上に降りること知らぬ

  海鼠には聞こえ大陸きしむ音

  高きとは明るきところ風光る

  夏帽子時間旅行をしてゐたり

 

 嶌田岳人(しまだ・がくと) 1963年、奈良県高市郡明日香村生まれ。



閑話休題・・春風亭昇吉独演会+立川志らく(於:中野ZEROホール)・・

 本日夕刻7時から、春風亭昇吉独演会、プレバトで約束した前座で志らく師匠出演とあって、500名のホールは満員。そして、ほぼ4年ぶりに、遊句会のメンバーの幾人かと顔を合わせることができた(この間には亡くくなられた方もいる)。その間に、遊句会の仲間だった春風亭昇吉はプレバトに出演し、全国区になった。終ってのトークで、前座なんて37年

ぶり、と志らく師匠。ともあれ、お二人の落語を楽しませていただきました。



     撮影・芽夢野うのき「とってつけた枯れではない枯芙蓉」↑

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