山西雅子「じゆいじゆいと日差しに声や芽吹山」(『雨滴』)・・


 山西雅子第3句集『雨滴』(角川書店)、帯の惹句に、


 寄貝の渚に年を惜しみけり

 ことばとは何か。

 こころとは何か。

 青空に、海に、春風に注ぐ優しい心情を、丁寧な言葉で、俳句に紡いでゆく。

 ことばにならない作者の思いが、ことばを通して、伝わってくる。

 季語が、新しい季節の顔を見せる。


 とあり、著者「あとがき」に、


  句集名は、「舞」主宰欄の名「雨滴抄」によるものです。この語の響きが好きです。

 二十五年前、第一句集『夏越』の「あとがき」に「言葉が言葉であるということの意味を確かに知りたい」と書きました。その思いは今も変わりません。その思いは今も変わりません。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。


  みどりさす菓子に五音のをみなの名      雅子

  玲瓏の珠となりけり冬の蠅

  冬空へ胸の中より鳩を出さむ

  どんぐりの裸の尻の氷りたる

  風鈴に鳴りづめといふ時来る

  かなしみに終りありけり氷水

  喜びの米(よね)といふありこぼしけり

  北吹くと種になりたるもの光る

  枯れ果てて性の抜けたる草ばかり

  ちちははときみわれほたるぶくろ白

 

 山西雅子(やまにし・まさこ) 昭和35年、大阪府生まれ。

 


      撮影・鈴木純一「立春だ傷口をやつらにむけろ」↑

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