林亮「風花の清めし空とこころづく」(『致遠』)・・


林亮句集『致遠』(私家版)、そのシンプルな「あとがき」に、


 前句集「歳華」(令和二年十二月刊)以降の約二年間の作品の中から、季節ごとに五つの主題を定め、一主題十五句として三百句を選んでみました。

 この二年は従前にもまして、俳句に向き合うことができたような気がします。

 「致遠」の意味は「遠い所に達する」ですが、実際に達したかどうかは別にして、そうありたいとの思いから句集の名としました。


とあった。 ともあれ、以下に、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。


  亡き人の座を上にして花筵         亮

  生者には抱えへきれざる花吹雪

  野川なすまでを流るる芹の水

  流木を焚くにはじまる春の浜

  五月からはじまるといふ風暦

  くたすなく卯の花腐し卯の花と

  会ふことを重ねて風と百合の花

  なほ先のありて揚羽のとどまらず

  活け直すまでは解かれず盆の花

  はなびらの散るに後るる冬桜


 林亮(はやし・まこと) 昭和28年、高知県生まれ。



★閑話休題・・樋口由紀子「水仙の前で何度も転んだわ」(「トイ」Vol.9)・・


 「トイ」Vol.9(トイ編集室)、その「あとがき」に、


 以前このあとがきに「ポッドキャスト(ラジオ)をやりたい」と書いたが、昨秋から本当に始めてしまった。海外の短編小説について語る「翻訳文学試食会」という番組だ。(中略)

 毎週水曜日20時に新しいエピソードを配信中。ネットで「翻訳文学試食会」と検索すれば出てくるので、よろしけば覗いてもらえるとうれしい。(干場達矢)


 とあった。ともあれ、一人一句を挙げておこう。


  東京のきつねうどんや寒の入     樋口由紀子

  初湯出て待つ筈が待たせてをりぬ    青木空知

  新海苔が出てデパ地下のすこし混む   仁平 勝

  陽炎の立ちたる角の煙草店       干場逹矢

  志と書き恥ずかしや去年今年      池田澄子



      芽夢野うのき「花八つ手ははのことあねのことまた」↑

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