金田一剛「天地人冬の大三角を生ける」(第46回・メール×切手・「ことごと句会」)・・


  第46回(メール×郵便切手)「ことごと句会」(2023年2月18日付け)、持ち寄り雑詠3句+兼題「指」一句。以下に一人一句と寸評を紹介しておこう。


  春浅しゆっくり動く足の指         渡邉樹音

  前山は片頬かすか緩みしか         渡辺信子

  モノローグを詰めてしまったシャボン玉   江良純雄

  春萌や土手に姉妹の三輪車         武藤 幹

  葱鮪(ねぎま)葱鍋葱だけ残り間抜けなり  金田一剛

  指笛の上手い漢と朧月          らふ亜沙弥

  冬の熊薄目で発す屁(ガス)ひとつ     照井三余

  残雪の泥を巻き込む轍かな         杦森松一

  冬木立ペン画のように陽は細き       大井恒行


★【寸評】・・・

 ・「天地人冬の大三角形を生ける」ーな、なんとスケールの大きな句でしょうか。まさか天地人を生けてしまうのですから(亜沙弥)。星座を生ける、とは楽しい。観察眼だけでなく、感性が表現させた世界(純雄)。

・「春浅し・・」ー実は私、足の指でじゃんけんができます。春浅いのでゆっくり動くんじゃない?(亜沙弥)。

・「前山は・・」ーもう少しすれば「山笑う」時期が来る。大胆に季語「山笑う」を省略してみせたのかも知れない、それを隠しているフレーズが中七・下五(恒行)。

・「モノローグを・・」ー自問自答で詰めこまれすぎた何かは、シャボン玉でなくても割れるか、破裂するだろう(恒行)

・「春萌や・・」ー暖かいイメージの言葉てんこ盛り。気温、体温が伝わってくる(純雄)。幹氏の同工の他の句に「指差して探す微かな春もよい」があるが、その句について、「小さなものによって大きな世界を後ろに描き出すのは、俳句の基本技巧のひとつである(大岡信)という言葉を最近本で読みました。まさにその典型のような一句ですね」(信子)。

・「葱鮪(ねぎま)鍋・・」ー葱好きな人も多いが、鮪も多いと思う。思わずお互いの驚きが目に浮かぶ(松一)。

・「指笛の・・」ーどんな音色か、興味深い。上手い漢になりたいものである(恒行)。

・「冬の熊・・」ー冬眠前の熊のオナラか!?「薄目で発す」がなんともユーモラス!実に巧い、脱帽!!(幹)。

・「残雪の・・」ー雪国の雪の深さを思わせる句であるが、単なる報告の句になってしまった。雪の少ない所で暮らしているボクには、その大変さが想像しにくい。

・「冬木立・・」ーひらの6選句。たとえは違うけど、筋骨隆々のドラミングよりも高橋幸宏のスリムさが心地よかったのかもしれません(剛)。

・その他ー「『言論の覚悟』かにかく春立つ日」(恒行)句に、三余氏が「結局どうしようもない事。信念を貫く老人の長生きに合掌」と評し、また、樹音女史は「蕗の薹ボツンと地雷に違いない」(純雄)句に、「うす緑の可愛い幸せのしるしのような蕗の薹。地雷に姿を変えるとは怖ろしい時代になったものだ」と評されていた。



         撮影・鈴木純一「春水の次には別の春の水」↑

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