鈴木光影「シナリオの外へ蓮に実飛びにけり」(「花林花」2023より)・・
「花林花」2023・Vol.17(花林花句会)、主要記事は、「花林花の作家 その十一 鈴木光影」、高澤晶子「鈴木光影句集『青水草』を読む」、「俳人研究 齋藤愼爾」である。誌は、一年に一度の刊行だが、日ごろの活動の充実ぶりが伺われる。ともあれ、本誌中より、一人一句を挙げておきたい。
空生まるる秋のひかりを水に溶き 高澤晶子
入口も出口も自由花野風 廣澤田を
地下壕の底で母と子凍りつく 榎並潤子
あと一枚のカレンダーにも夜が来る 石田恭介
テレビほどは笑わぬラジオ夏の雨 金井銀井
カチューシー踊る知事をり秋澄めり 島袋時子
夏怒濤デジタル文字はすぐに消え 鈴木光影
春泥に火薬の臭ひ入り混じる 福田淑子
青信号サーフボードが歩きだす 宮﨑 裕
水栓を締めて年越すホームレス 杉山一陽
半身ない蝉も無駄なくいただきます 内藤都望
夏真昼母に抱かれし暗さかな 渡邊慧七
★閑話休題・・「人の世に熱あれ、人間に光あれ」(全国水平社創立宣言・1922年3月3日)・・
部落解放同盟中央本部編『写真記録 部落解放運動史 全国水平社創立100周年』(解放出版社)、その全国水平社創立100周年記念事業推進委員会委員長・組坂繁之「発刊にあたって」に、
1922年3月3日、全国水平社創立大会が挙行された。その日、長い間、差別と迫害に苦しんできた被差別部落民が京都市岡崎の京都市公会堂に結集し、それまでの融和的な方法ではなく、自らの団結と闘争により自主的解放運動の開始を宣言したのであった。(中略)
「全国に散在するわが特殊部落民よ団結せよ」との呼びかけで始まり、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」で結ばれる創立宣言が読み上げられたとき、「会衆みな声をのみ面(おもて)を俯(ふ)せ歔欷(きょき)の声を四方に起る」という状況であったという。被差別部落大衆が、それまでいかに虐げられ、屈辱的な日々に呻吟してきたかを如実にあらわす光景である。
この水平社宣言を起草したのが、奈良・柏原の被差別部落出身の西光万吉(清原一隆)先輩であった。(中略)
戦時下、水平社の運動も「国策」に沿った戦争協力の方向へと転換したのは、痛恨の歴史であった。1942年1月、「言論出版集会結社等取締法」の規定により、組織として消滅することになった。このときも松本委員長は、権力による「解散届」提出の強要に対し、自ら水平社を解散することを拒むとともに、水平社の象徴である総本部の荊冠旗を守り続けた。(中略)
この100年にわたる闘いは、多くの成果をあげ、日本の人権状況はたしかな歩みをつづけてきた。しかし、いまだ道半ばである。水平社100年の闘いに思いを馳せ、その伝統と経験を継承し、第2世紀へ踏み出す部落解放運動の糧とするために本書は編まれた。
全国水平社以来100年の闘いに学び、部落の完全開放と、日本と世界の人権確立のために本書が生かされることを、衷心から願うものである。
とあった。
芽夢野うのき「風冷た花みつまたの眼の潤み」↑
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