照井三余「病めるごと痩せる月夜の寒鏡」(第45回・、メール×郵便切手「ことごと句会」)・・


  第45回(メール×郵便切手)「ことごと句会」1月21日付(土)。兼題は「明」+雑詠。本年もよろしくお願いいたします。以下に、一人一句と寸評を挙げておきます。


  冬の灯の明朝体の薄笑い         江良純雄

  被弾せし壁や老女と猫に冬        渡辺信子

  ひとの情けの雪片をあたためる      照井三余

  餅搗きの唄も遠のく船出かな       金田一剛

  明烏いけない初夢(ゆめ)を終わらせる  武藤 幹

  九年目の正月飾り無しとする      らふ亜沙弥

  空耳か狐火の行く荒地にて        渡邉樹音

  春の陽の飛魂(ひこん)よ風をつかまえろ 大井恒行


【寸評】

・「病めるごと痩せる月夜の寒鏡」ー痩せているのは、月か自分の面影か?(信子)。「病めるごと痩せる月(夜)」と「寒の鏡」の配置がいい。流石、大人の一句(剛)。

・「冬の灯の・・」ー楚々として美しいが、素っ気なくもある「明朝体」。「冬の灯」「薄笑い」が良く似合う(幹)。

・「被弾せし・・」ーウクライナを思う。戦争に犬猫は無縁。戦争と冬の暗さ重さを猫が吸収。小道具を効かせた(純雄)。

・「ひとの情けの・・」ー健気な素直なこころを温め集めたいものです(恒行)。

・「餅搗きの・・」ーリズムも良く抒情的です(松一)。故郷の餅搗き唄なのでしょうか。離れていく淋しさを感じます(樹音)。

・「明烏・・」ー明烏には、いろいろな意味と場面があってr、いけない初夢(ゆめ)に、夢流しへの思いがこもっている(恒行)。

・「九年目の・・」ー三年目の浮気ではないが、九年の数字の置き方は絶妙かも。もちろん、事実が背景にあるかもしれないが・・(恒行)。

・「空耳か・・」ー狐火は冬の季語だったんですね。「狐火を信じ男を信ぜざる」(富安風生)私の愛唱句を思い出しました(信子)。

・「春の陽の・・」ー「つかまえろ」と少々、乱暴な物言いが明るい(樹音)。

 他に、照井三余の評のなかに、「初鴉鏡を磨みがきたる朝に」(恒行)の句に、「何も語らず、鏡を磨いていると初鴉の鳴くのを聴くただそれだけの事を詠う」とあった。



        撮影・中西ひろ美「大寒や偽の兎を可愛がる」↑

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