小山玄紀「綺麗な面探すばかりの日曜日」(『ぼうぶら』)・・



 小山玄紀第一句集『ぼうぶら』(ふらんす堂)、序は櫂未知子、それには、

(前略)たとえば、、篠原鳳作の〈しんしんと肺碧きまで海の旅〉につき、筆者は少し書いたことがある。それは、俳人がいう「この句には夏の季感がある」からいいのではなく、この句は無季だからこそ価値があるのだ、といった論の展開の仕方だった。ある人がこの句を夏らしいと思い、またある人が秋らしいと思ったところで、それが何になるのだろう。無季の作品は、それが「季感がない」からこそ、価値がある。「肝を据えて」「季語を選択しなかった」ことにこそ、この句集には価値が生まれるに違いない。

 と記し、また、跋の佐藤郁良は、

 (前略)私は今まで多くの若者を育ててきたが、その中でも玄紀君はとびきり優秀な青年である。編集などの実務能力が高いばかりでなく、俳句に対する姿勢も誰よりも真摯であるし、さまざまな場面で他者への気遣いもできる。この春からは医師として第一歩を踏み出し、幸せな結婚も決まった。何ひとつ不自由のない順風満帆な人生を歩んでいる。
 その一方で、玄紀君は、どこか現実の世界に馴染み切れない「渇き」のようなものを感じているのではないかと思うことがある。あるいは彼は、それまで自覚していなかったそうした「渇き」に、俳句を作り続ける中で気づいたのではないだろうか。

と記している。そして、著者「あとがき」は、

 私自身の脆さや弱さを恥じずに晒すことができたならば、「ぼうぶら」という名前に敵った句集になったと、胸を張って言えます。

と結ばれている。集名に因む句は、

  一人一個ぼうぶら持つて前進す     玄紀

であろう。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい(蛇足かも知れないが、作品は、現代仮名遣いの方が相応しいかも)。

  龍の玉探りて鳩は無数なり
  掌を拭いて遠くの声のこと
  井戸と駅行つたり来たりする少女
  結界を出でゆく卵数へをり
  後から氷の匂してきたり
  遠ざかりつつ友人は楔形に
  心太一本づづは曇らずよ
  秋の瀧撮らむとすれば誰か泣く
  傍に蝶凍つる印の浅い歌声
  桃色のピアノの内の豪雨かな
  みどりごの肉へと冬のピアノかな
  襞一つなきスカートも春氷
  棘描くうちにすつかりよくなりぬ
  蝸牛そろそろ錆びてもらふ頃
  トンネルと死後といづれが涼しいか
  鏡に今家族全員映りけり
  探すべきもの乳母車ばらしても
  妹は瀧の扉を恣

 小山玄紀(こやま・げんき) 1997年、大阪生まれ。



 2019年2月18日に、京都・同志社大学今出川キャンパス内の「尹東柱詩碑」の前で行われた〈日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〉

 ★閑話休題・・11回「〈日本・韓国・在日同胞詩人共同 尹東柱詩人追悼の集い〉は〈213日(月)〉に開催・・


豈」同人でもあり、神戸三宮「スペイン料理店・カルメン」を父から引き継ぎ、かつ、文学に関する発信を続けている大橋愛由等から案内が届いたので、以下に紹介しておきたい。


◆―11回「〈日本・韓国・在日同胞詩人共同 尹東柱(ユン・ドンジュ)詩人追悼の集い〉は〈213日(月)〉に開催

 今年も、〈日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〉(金里博・大橋愛由等共同主宰)を213日(月)に同志社大学今出川キャンパス内の尹東柱詩碑前で午後3時から行います。寒い季節です。みなさん、暖かい格好をして参加してください。この〈追悼の集い〉は若くして、1945216日に日本国家によって殺された詩人・尹東柱を追悼する詩人たちの朗読会です。 

  参加予定の詩人のみなさんは、当日の集いに配布する冊子をあらかじめ作成しますので、28日(水)までに、私(大橋)のメール maroad66454@gmail.com あてに作品を送ってください。WORDファイルで送る場合は、メール本体にも同じ詩稿を貼り付けて送信してください。WORDOSの違いによって、文字化け、ルビの欠落などが起こりやすいためです。

 名称/第11回〈日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〉

日時/213日(月)午後3時に現地(同志社大学今出川キャンパス内「尹東柱詩碑前」)集合。

構成/現在決まっているのは以下のとおりです。

1/開会挨拶・大橋愛由等(共同主宰者・図書出版まろうど社代表・詩人)〉

2/あいさつ 金里博(共同主宰者・在日共同代表・詩人)〉

3/尹東柱作品朗読〉

4/献花〉

5/器楽演奏(津軽三味線・彌月大治

6/詩人たちによる書き下ろし詩の朗読〉

(会場は戸外です。それでなくても京都は底冷えがします。十分暖かい格好をして自衛してください・ 

 過去4回の集いの際に作成した冊子が以下のサイトで見ることができます。

日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〈2019218日〉7回目

https://melange-kobe.seesaa.net/article/481596924.html 

日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〈2020210日〉8回目

https://melange-kobe.seesaa.net/article/481580561.html 

日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〈2021215日〉9回目

https://melange-kobe.seesaa.net/article/481580759.htm 

日本・韓国・在日同胞詩人共同尹東柱詩人追悼の集い〈2022221日〉10回目

https://melange-kobe.seesaa.net/article/496768946.html




        芽夢野うのき「そのままに凍てる紅梅そこ彼岸」↑

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