林ひとみ「人の世に入りて出口なき鯨」(現代俳句協会講座・第8回「金曜教室」)・・

 


 本日は、現代俳句協会講座・第8回金曜教室だった。雑詠2句持ち寄り、全句講評。以下に一人一句を挙げておこう。


  万象の声封じ込め滝凍つる       白石正人

  五つほど身に沁みにけり除夜の鐘    武藤 幹

  初夢やルーシーとゐて初茜       山﨑百花

  介護にも疲れおぼえし恵方巻      植木紀子

  父母子ひとりひとつの福だるま     林ひとみ

  風花や誰のものでもない地球      川崎果連

  双六の右手左手振るひとり       杦森松一

  凍滝に封じ込めたる我が怨念      石川夏山

  木菟の心の内を又聞かれ        宮川 夏

  左義長終へ風砂の浜に戻りけり     赤崎冬生

  月冴えてインフラ避けて通りけり    岩田残雪

  浄不浄凍て逃れずに黒き鶴       大井恒行


 次の第9回は2月17日(金)、課題は字しばりで、各一句。字は「果」「風」、有季・無季は問わない。



★閑話休題・・林ひとみ詩集『藍の月』(季節書房・2018年11月刊)・・


 本日の金曜教室の最高点句だった「人の世に入りて出口なき鯨」の作者・林ひとみの詩集である。挿画も著者。集名に因む「藍の月」の詩は長いので、ここでは、もっとも短い詩一編のみを紹介しておきたい。


       りんご


  りんごの形をした雲が


  水色の空に

  ぽかりとうかんでいた


  空も

  おなかが空いたのだ


  ひとくち

  ふたくち

  かじられて


  ちぎれた雲は

  流れ消えゆく


  音もなく

  おだやかに


 林ひとみ(はやし・ひとみ) 1978年、東京生まれ。


               

  撮影・中西ひろ美「ごちゃごちゃのなかにまぎれて春を待つ」↑

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