関口比良男「黒生れ たちまち白が包囲する」(「俳句」7月号より)・・

 

「俳句」7月号(角川文化振興財団)、連載・角谷昌子「俳句の水脈・血脈--平成・令和に逝った人々」第49回は「関口比良男」。その「比良男の生い立ち」に、


 比良男は、明治四十一年(一九〇八)十二月十五日、東京世田谷に生まれる。父横田清兵衛(日進銀行頭取)、母関口ゑい。本名貞雄。戸籍上では、父の弟横田喜兵衛の庶子。父の死後、十一歳で戸籍通りに嘉兵衛の家に預けられる。だが、二年後に伯父の家になつかないという理由で、生母の養子として縁組され、母は理髪業で比良男を養うという複雑な家庭環境だった。

 十九歳で小学校の代用教員として勤務し、〈朝露を踏み麦の穂の影を踏み〉と詠む。翌年、國學院大學高等師範部に入学、金田一京介、折口信夫に教えられた。


 とあり、 「山﨑十生氏(『紫』主宰)に聞く」の「『紫』主宰継承の思い」では、


 平成六年(一九九四)の「紫」八月号に師は「私に万一のありました場合、紫の題号および経営の形態や方針につきましても、十死生君にすべて一任する考えでおります」と書かれた。私は、師の召天の日には、意志を継ぐ覚悟をしており、翌年、主宰を継承した。

 師は常々、「俳句芸術派」を標榜していたので、私もその精神を引き継いでいるちもりである。(中略)

 このように語る山﨑氏の代表作に〈もう誰もいない地球に望の月〉(句集『伝統俳句入門』)がある。人類が滅亡したあと、〈望の月〉が巨視的に地球を眺め、照らしている。山﨑氏は、美しくも怖ろしい景を描出して、地球上の戦争や環境破壊に警鐘を鳴らし、俳句芸術の象徴性の迫力を見事に示している。


 とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句をあげておきたい。


  九十九里あるというのに蟹走る         関口比良男

  夏来たる子らよ馬には乗つてみよ         西村和子

  俳諧の国に青黴生え放題            岩淵喜代子

  帚木の枝の岐れの杳として            山口昭男

  鶴帰る吊るしておかむ魄の紐          鳥居真里子

  昭和の日昭和を知らぬ子の未来         稲畑廣太郎

  通草咲く夕べは侏儒の饒舌に          佐怒賀直美

  出たからは酒も辞さずよ春の昼          三村純也

  銭湯へ会津桐下駄蚊食鳥             広渡敬雄

  偲ぶとは耳澄ますこと合歓の花          宮崎斗士

  草いきれかな屈従はくりかへす          青山茂根

  万緑やむかし優良多子家庭            福永法弘

  子宮いだく天の川いくつもの我流る        小田島渚

  鉄鍋を呑む火厨はとうに朱夏           三品吏紀



閑話休題・・大井恒行「現代俳句入門ー俳句は過渡の詩ー」(令和7年10月開講「TAMA市民塾」募集中~7月15日(火)まで/多摩30市町村対象)・・


 多摩30市町村対象「TAMA市民塾」(共催 TAMA市民塾・公財 東京市町村自治調査会)、


・開講期間 【6か月コース】2025(令和7)年10月~2026(令和8)年3月

・会場   多摩交流センター(京王線府中駅北口徒歩3分)ほか


★募集期間 2025年6月~7月15日〈当日消印有効〉

★申込資格 多摩地域30市町村に在宅・在勤・在学の方

★申込方法 通常はがき(85円)でお申し込み下さい

      はがき1枚につき1講座名を記入(1枚に2講座記入は無効)。

      1人で2講座まで(3講座以上申し込みはすべて無効)。

★応募者が定員を超えた場合は抽選。抽選結果は8月2日(土)に、当選者のみ封書にて発送。

★申込先 183-0056 府中市寿町1-5-1

      府中駅北第2庁舎6階 多摩交流センター内 「TAMA市民塾」

★問合せ先 042-335-0111(土・日・祝を除く9時~16時)

★受講料 6回講座 4200円  12回講座8400円

     ・期日までに受講料をお払込み下さい。

      払い込み方法は、当選通知の中でお知らせします。

     払い込み期限は 8月22日(金)

★その他・講座カリキュラムはTAMA市民塾のホームページで見ることができます。




        撮影・鈴木純一「爆弾から平和生まれて虹ふたつ」↑

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