山本敏倖「にんげんの前後に影を生む良夜」(「原点」No,15・「第6回口語俳句作品大賞顕彰/記念(誌上)俳句大会」)・・


  「原点」NO.15(主流社)、特集は「第6回口語俳句作品大賞顕彰/記念(誌上)俳句大会」(主催・口語俳句振興会/後援・現代俳句協会)の巻頭言に田中陽は「口語俳句 タテ軸とヨコ軸と―ー口語俳句振興会を閉じます。」と記している。従って「次号『原点』NO.16は終刊号として発行します。」とある。田中陽いなければここまで続くことは無かったであろう口語俳句振興会であった。いわば、だれも代替えすことのかなわない活動であった、と言えよう。本文の中に、


(前略)さて、以上述べてきたように、文学的に成功を収めたと見られる第六回口語俳句作品大賞、その懸賞記念としてのこの(誌上)俳句大会をもって、口語俳句振興会を閉じることにします。幹事長当時、「口語俳句協会」といった正式な組織を維持するに見合う人材が欠乏し、その解散を決議、「協会」は現代俳句協会に委ねて、新たに口語俳句振興会として再出発したとき、僕はすでに80歳を超えていた。

 今は90歳、「卒寿」という山に登頂できて、かつ先述のとおり、栄えある第六回作品大賞顕彰(誌上)記念大会も無事済ますことができて、チャンスだ!と終止を決断した次第です。勿論、体力の衰えを自覚してのことでもあります


 とあった。ともあれ、以下に各選考委員選・高点句を紹介しておこう。


   捨てた未来が蝸牛になっていた      神山姫世

   麻痺の指ひらけば河口のある手相     林美代子

   戦争する国には行けぬかたつむり    小林万年青

   はらわたに初日を入れて座禅する     山本敏倖

   にんげんの前後に影を生む良夜       〃

   剥いでも剥いでも白菜秘密を黙秘する  加藤かほる

   ラセン階段龍の鱗が落ちて来た      新庄佳以

   俺が居てお前が居ない年の暮       鈴木築峰

   父の日か昭和語らぬおやじだった      〃

   多喜二忌が来る戦争が止まらない     山岸文明

   布団干す 2次避難がはじまったようだ  杉山朝子

   略語氾濫冬野の脳がおぼれ出す      鈴木喜夫 



★閑話休題・・大泉史世(書肆山田)3回忌追悼供養の会(於:酉松)・・


 本日、5月18日(土)は、雑司ヶ谷「割烹 酉松(とりまつ)」に於て、明日、5月19日の大泉史世の命日に因む3回忌法要が行われた。読経は鈴木一民の実妹、献杯は高橋順子。愚生にとっては、久しぶりに旧知の人に会える機会となった。出席の方々に、愚生の句集『水月伝』もお渡しすることができた。なかでも、大阪から駆け付けた保坂幸司に50年ぶりにまみえ、そして、昨年、『保田與重郎の文学』(新潮社)を上梓した前田英樹は、大津市・義仲寺無名庵第24世庵主を務めていたことを知った(今年開催の時雨忌には、参ずる約束をした)。また、最近『揺腕法(ようわんほう)』(日貿出版社)を上梓した小用茂夫を含めて、会の後、雑司ヶ谷駅近くの喫茶店で久しぶりに歓談した。

 上掲写真の安藤元雄詩集『惠以子抄』(書肆山田)は、大泉史世が生前最後に制作のすべてにかかわった書籍ということである。



     撮影・鈴木純一「口響くイワンダビデの撃ちまくり」↑

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