大竹多可志「青空の風の花かも花水木」(『デジャ・ビュ』)・・

 

 大竹多可志第9句集『デジャ・ビュ』(東京四季出版)、著者「あとがき」に、


 (前略)昭和六年に俳誌「かびれ」を創刊主宰した祖父大竹孤悠、そして「かびれ」主宰を継承した小松崎爽青のもとで、門前の小僧として俳句を始めた。それは昭和三十七年、十四歳の時であった。あれから六十年が過ぎた。こんなに長く俳句をやるとは、思ってもみなかった。私も七十五歳、後期高齢者となった。年は取っても俳句に年を取らせないように心掛けている。(中略)

 「かびれ」の生活信条「生活即俳道」(社会人として、己の責務生活に真摯に生き、その生き様の中から湧き上った詩的情感を俳句に詠む)の実践の結果が本句集と思っている。

 私たち「かびれ」は、詩的生活の実践の中から実感を大切にした季感詩俳句を目指してしる。目標はあと七年後の「かびれ創刊百年」である。

   デジャ・ビュの思ひふと湧く春灯       多可志


 とあった。ともあれ、本集より愚生好みになるが、いくかの句を挙げておこう。


  東京にビルがまた建ち霞みけり    

  春愁の飛べぬ木馬の翼かな

  吾が家を全て灯して年迎ふ

  生き方に減り張りがあり花擬宝珠

  朝夕によく笑ひたる生身魂

  八月や団塊世代かくも老い

  秋日差やや身の影の詰まりけり

  凍鶴の拒絶の影の黒さかな

  ふらここを漕ぎて触れたる白き雲

  天国も地獄も水の温むころ

  ネコと言ふボス猫がをり漱石忌

  十月の風が身を透く夕べかな


 大竹多可志(おおたけ・たかし) 1948年、茨城県日立市生まれ。



★閑話休題・・山内将史「正津勉の詩に寄せて/川に降る雪や眠りにゆく故郷」(「山猫便り・2024年4月27日」)・・


 山内将史の葉書便りの「山猫便り/二〇二四年四月二七日」に、


 (前略)「眠りにゆく故郷」は正津勉」の詩「九ツノ頭ノ竜ノ川」からの借用。自選句集に入れたかったが前書に悩んだ。「正津勉に」は乱暴。「氏」を付ければ気安い。詩を引用すると字数が多すぎるかと。

  『月とカナリヤ』は来年の今頃に自費出版する。


とあった。


  撮影・芽夢野うのき「五月のひかりとどまることもなく聖地」↑

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