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坪内稔典「風光るアリストテレスもカバもいて」(「猫町」No.11より)・・

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 「猫町」No,11/2025年5月号(発行人:三宅やよい 編集人:赤石忍)、表2に 献辞がある。    雪はいいな・・・・・/東京にも埼玉にも/差別なく降る・・・・・・                           魔矢峰央『翔んで埼玉』より       一人の作家に見開き2ページがそれぞれ、与えられ、レイアウトされている。エッセイもある。ともあれ、以下に一人一句挙げておこう。   この中に信者のいないクリスマス       きゅうこ    まんまるな春が置き配されており       静 誠司   座る用石なのだろうか春の昼         杉山魯壜   粒あんの鯛焼き買うて港まで         坪内稔典   雪でした誰かについて行きたい夜       赤石 忍   破壊され人無き都市に花の咲く        今泉秀隆   タクシーにコートと共に押し込まれ      近江文代   春眠しそのうち永遠に眠れます         沈 脱   ホーホケキョAdoが林檎を越えてゆく    ねじめ正一   水着ではいけない場所にいる水着       藤田 俊   指をポキポキ膝をポキポキ蕨ポキ    おおさわほてる     いちぬけて屋上にいる十二月        三宅やよい   残業をやめて雑踏寒昴            諸星千綾   他人の死はがきで届く十二月         山﨑 垂   コオロギですあなたのそばにいるのです  芳野ヒロユキ          撮影・中西ひろ美「暑気兆すお人好しには鍵かけて」↑  

山崎方代「力には力をもちてというような正しいことは通じないのよ」(「現代短歌」No,108より)・・

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 「現代短歌」No,108(現代短歌社)、特集は「山崎方代 ドリル50題」。大下一真「方代短歌の非短歌性」の中に、 (前略) 戦傷で右眼失明、左眼0.01で昭和二十一年に帰還した山崎方代は、「一路」に再び出詠を始めたが、宗匠主義の否定から若手が脱会、二十三年六月に「工人」が発足、方代も加わる。この頃からの無二の仲間が岡部桂一郎である。  方代は当時、傷痍軍人教育による靴の修理に従事していた。    ゆくところ迄ゆく覚悟あり夜おそくけものの皮にしめりをくるる( 中略)     欄外の人物として生きて来た 夏は酢蛸を召し上がれ    丘の上を白いちょうちょうが何かしら手渡すために越えてゆきたり  望郷、孤独などを通奏低音に置きながら、文語口語ないまぜ、換言すれば自在な話法で訴える。訴えるかと思うと、外しもする。「欄外の人物として生きて来た」と物語めいた言葉で始まって、「夏は酢蛸を召し上がれ」と、想外の取り合わせをして、方代がにんまりと笑っている気配がする。  非短歌的なものの導入に、方代の面目を見る。 (中略) 最後に謎を言えば、方代は右左口 (うばぐち) 尋常高等小学校卒業、つまりは今日の中学校卒業が彼の学歴である。その方代が、文語体で難しい言葉も混じる鈴木信太郎訳のヴィヨンを読みこなし自家薬籠中のものにしたというのは謎で、奇跡的なように思われるのだが、どうだろうか。  とあった。ともあれ、本誌中より、方代の歌をいくつか挙げておこう。    生れは甲州鶯宿峠 (おうしゅくとうげ) に立っているなんじゃもんじゃの股からですよ   間引きそこねてうまれ来しかば人も呼ぶ死んでも生きても方代である   首のない男が一人炎天のかげなき道を跨ぎ急げり   ゆえしらぬ涙は下る朝の日が茶碗の中のめしを照せる   寂しくてひとり笑えば卓袱台 (ちゃぶだい) の上の茶碗が笑い出したり   机の上に風呂敷包みが置いてある 風呂敷包みに過ぎなかったよ   手のひらに豆腐をのせていそいそといつもの角を曲りて帰る   こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり   担 (かつ) ぎだこ取れし今でももの見れば一度はかついでみたくなるのよ   このようになまけていても人生にもっとも近く詩を書いている   ふるさとの右左口郷 (うばぐちむら) は骨壺の底にゆられてわがかえる村  ...

高野ムツオ「炉火に炙る戦争知らぬ脛二本」(「小熊座」2025年5月号)・・

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  「小熊座」5月号、特集は「小熊座四十周年記念特集Ⅰ」(小熊座俳句会)、特集「小熊座の思い出を語る」の執筆陣は、植木國夫「ふくしまを歩く」、平山北舟「『小熊座』の思い出あれこれ」、杉美春「『土の会』のこと」、佐竹伸一「山形に小熊座の光を」、布田三保子「小熊座という学び場」、江原文「ムツオ主宰とのベトナム」、佐藤成之「星の導き」、髙橋彩子「金(くがね)俳句大会のこと」。俳句時評に樫本由貴「どこで何を書かせるか」。その他、及川真梨子「星座渉猟ー俳壇近作鑑賞」などがある。  実は愚生にも「小熊座」との思い出はある。記憶だけで言うのだが、たぶん「小熊座」5周年?記念大会、塩竈市でのこと。佐藤鬼房健在である。三橋敏雄が祝辞の中で「創刊のときがいかにも遅すぎる。もう少し早ければ良かった・・」と感想を述べていた。高野ムツオ編集長時代のこちである。その折、シンポジウムが行われ、愚生はパネリストとして、片山由美子、故小澤克己、高野ムツオらとともに登壇した。渡辺誠一郎に初めて会ったのもこの時だ。ということは、もう35年前のことなるのだ。翌日は、山寺を案内してもらったのを覚えている。佐藤鬼房とツーショットも撮っていただいたようにおもうが手元にはない。攝津幸彦死去一年後の偲ぶ会には、遠路、鬼房氏は来場されたのをよく覚えている(深謝!)。  ともあれ、以下に、本誌よりいくつかの句を挙げておこう。    みちのくの道は茨や蜷の道        渡辺誠一郎    弥撒の声茎立ちの丈整ひぬ        津髙里永子    人獣婚あり水仙花が匂う          沢木美子    砂の上に太陽うごき三鬼の忌        川口真理    冴返ることに廊下の吊鏡          土屋遊螢    食べて寝てまた食べて寝て春を待つ     永野シン    三月や脛に覚えの波上がる         浪山克彦    机上に啼く青鵐も逝きてしまひけり     増田陽一    龍神のはらわた陸奥の氷柱とは       佐藤成之    囀りへ非常階段のびてゐる         佐川盟子    初夢の金貨崩れて目覚めけり        小田島渚    操りの糸の先より囀れり          吉野秀彦    木蘭の意外と低き骨密度         郡山やゑ子    海女からの太平洋の雫かな        ...

大塚凱「甘皮を剥いてあらゆる日永かな」(『或』)・・

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  大塚凱句集『或』(ふらんす堂)、珍しく、著者の「あとがき」も誰かの序文や跋文もなく、作品を読むため一切の飾り、手がかりは無く、ひたすら作品を読むしかない句集で、最近では珍しいシンプルさである。装幀も糸かがりがそのままむき出しで、カバーも勿論ない。表紙だけの一冊である。これもシンプルといえばシンプルである(シンプルでないのは句の題の多さで愚生には難しかった)。若い作者ゆえ、本文活字は小さい。愚生は、すでに天眼鏡を片手に読み進むよりほかに手立てはない。という言い訳も手伝って、ほぼ、見逃していると思うが、つまるところ、愚生好みに偏する、いくつかの句を、以下に挙げておきたい。    絵に描いてゐるとさくらがくづれだす      凱    帰りくる帆があり秋の名もない帆   白昼をぶらんこの見えるまで見る   ひがしその白い流木そのワルツ   逃れても月ありあまる都心かな   水澄んでゆき何の実か忘れ去る   文体がちがふ夜食のまへとあと   ハンカチが鳥にもどらぬやうに畳む   編み目から日差しこぼれて鳥交る   積み木もう積む木がなくて風の秋   デネブ・ベガ・手は淋しくて水を買ふ   吹かれたら光る葦さういふことさ   午後のひかりうはごとがちに菌生え   竜頭巻く寒林のまんなかと思ふ   夜長あなた僕の弱火が強いといふ   空蝉やつむじにひびく雨の芯   そんな気のして湯豆腐の灯に帰る   夏の夜の紙から紙の蝶を逃がす   ばつたんこ何回忌かが急に来て   大塚凱(おおつか・がい) 1995年、千葉県生まれ。       撮影・中西ひろ美「ひそひそと小滝は人を集めつつ」↑

新宅秀則「新緑やゆたりゆたりと粥を喰む」(第41回「きすげ句会」)・・

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   5月15日(木)は、第41回「きすげ句会」だった。清水正之さんは、手術後の復帰の句会だった。兼題は、「くらやみ祭」。以下に一人一句を挙げておこう。    本殿の前に鎮 (しず) もる荒 (あら) 神輿     井上芳子    雨しづく友に逢ひたき青葉闇          久保田和代    コギツネも亡者も混じるや闇祭          山川桂子    半鐘蔓石楠花の紅燃へ盛る            濱 筆治    ふるさとの夏川わたるレール音          杦森松一    くらやみ祭神木目覚む大太鼓           新宅秀則    くらやみを切り裂いて練る神輿かな        清水正之    はちまきの解 (ほど) けて肩にくらやみ祭     高野芳一    新築の家の新樹の青葉かな            寺地千穂    今を生きる重たさのあり花は葉に         大井恒行 次回は6月19日(木)、兼題は「五月雨」。 ★閑話休題・・井上麗香(ビオラ)・蕨野真実(チェロ)「ティータイムコンサート」(於:府中市生涯学習センター1階レストラン ミネルヴァ)・・  句会途中ながら、皆さんの提案で、句会場のある会館一階で、入場無料・申し込み不要のティータイムコンサート(15時~15時30分)があるというので、句会の休憩の折に,聴きに行きましょう、ということなって、チョッピリ気分を転換をした。              鈴木純一「よつつじのひつじ読みつつ夢うつつ」↑

神野紗希「野は朝へ子馬は風の根が知りたい」(「noi」vol,1)・・

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  「noi」vol.1(発行人 神野紗希・野口る理)、「俳句雑誌ノイ」とあり、表2には 「未知でありながら懐かしい/新鮮な普遍性を求めて」 とマニフェストされている。さらに、扉のには、ブログタイトルにした神野紗希「野は朝へ子馬は風の根が知りたい」の句に並べて、    雪のひらめきひそませて野のはじめとす    る理 と置かれている。そして、両名連名で、  「noi」は「私たち」という意味をもちます。個々の「私」が、「私たち」の共有する言葉を使って俳句を創作し、そうして生まれた「私」の作品は、読まれることでまた「私たち」の世界に加わり広がります。同じ時代をそれぞれの場所で生きる書き手が、今を共有し、自分の力で歩いてゆくための場として、「noi」を創刊することに決めました。「noi」は、誌面や句会などを通して俳句観を共有しながらそれぞれに自分の俳句を追求する、俳句作家による雑誌です。俳句結社でも同人誌でもなく、ひとつの「俳句雑誌」として。参加する作家を「誌友」と呼び、互いに俳句を深め合うことを目指します。掲載する作品は、誌友を「作家」として照らし出すべく、代表が「編集者」の心で選句にあたります。  と記されている。最近、若い世代の創刊誌が次々誕生しているが、「noi」は月刊誌である。かなりの負担を自らに背負う決意を讃えたい。ともあれ、以下に、アトランダムになるが、いくつかの句を挙げておこう。   花あしびるるうと君の泣きはじめ         弓木あき   書くしかない春暁が救ひにならぬふゑ       山口遊夢    風邪の子は暇や鍵盤ハーモニカ         後藤麻衣子     みつあみをじょうずにできたヒヤシンス     春野れいん    額こそ汝が日記なれ風花来            永山智郎    バナナ食む昼もそのままナイトブラ        木田智美    蘖に大喝采の風が吹く           三浦にゃじろう     飛花ったり落花ったりする国だ           斎建大    また泣かれホワイトデーの雲でけえ         広瀬康    万年の春はあなたに足りるの           葉ざくら    春を怺えきれずに光る水でしょう        武智しのぶ    石鹸玉るるる野守のこころざし          神野紗希    ひこばえ...

鎌倉佐弓「パンジーに水やるついでに小石にも」(『APPLAUSE FOR A CLOUD/雲へ拍手』)・・

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  鎌倉佐弓第7句集『雲へ拍手/Applause for a Cloud』(Black Ocean)、挟み込みの鎌倉佐弓の便りには、   本書『雲へ拍手(APPLAUSE FOR CLOUD)』は、句集『潤』『水の十字架』『天窓から』『走れば春』『海はクララ』『雲の領分』に続く私の第七句集です。主に国際俳句雑誌『吟遊』第71号(2016年7月30日)より第90号(2021年4月20日)に発表した作品を中心にまとめました。  その上で、「吟遊」第22号(2004年4月20日)より私の俳句を翻訳してくださっているジェームス・シェイ(James Shea)氏の尽力で、日本語を英訳で出版することになりました。 とあった。集名に因む句は、    雲へ拍手じょうずに春を呼べました          佐弓   Applause for a Cloudー   you did such a fine job          of calling  for  spring  であろう。ともあれ、以下に本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう(英訳部分は除く)。    紅ばらの尖るのは棘だけにおし   星を入れ損ねた氷柱からしずく   赤おにの涙もながれ春の川   どうしてもこちらに来るのね蟻の列   「暑いってば」吹き方を忘れた風に   砂の塔すなを信じて砂にそびえる   あめんぼの後から水がのっしのっし   「ボンジョルノ (おはよう) 」カーテンが菫に挨拶    フレスコ画から赤が消えマリアも消えた   塔は思う空はいつまでいてくれるか   さくら三日目散るのが怖くなっている   枝よりも幹を信じて木の葉散る   初景色仕上げは塩をひとつまみ   鎌倉佐弓(かまくら・さゆみ) 1953年、高知県生まれ。       撮影・中西ひろ美「たまごにも卵相があり五月場所」↑