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マブソン青眼「0 しらうめのつぼみのまえのまえ無」(『世界の起源』)・・

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 マブソン青眼句集『世界の起原』(参月庵出版)、その「まえがき」に、   本集は「量子俳句」を所収する。量子俳句とは、新韻律「五七三」の「無垢句」の一種であり、主に 一物仕立てによる、“原初な波動“ を表す俳句である。そんな「量子俳句] のなかでも二種類がある。冒頭に「0」と記した句はボーズ粒子(光子など)すなわち“調和する素粒子“のような句で、「1」の句はフェルミ粒子(電子など)すなわち“反撥する素粒子“のような句となっている。 (中略) 目次のバイナリーコードは量子力学で言う「不可解な偶然」「何かの自由意志」の表れとなるか。宇宙が生まれ地球が生まれ多くの生命体が生まれた。その中で、ヒトの詩は 「世界の起源」から届く遥かなる意志 (アニマ)のエコーとなれるか。  とあった。ともあれ、、以下に、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。   0 藤房がふれあうふれあう微音           青眼  1 柳ゆれタマムシ010  1 ケシゆれている不可逆のじかん  0 宇宙から分け入って来る白雨  1 トカゲ加速減速停止擬死  0 さみだれのあまつぶごとの速さ  0 病葉 (わくらば) の穴から揺れる無の無  1 滝のうえ鳥影天へ還る  0 パラパラの鳥語一陣 南風 (はえ) に  1 小川から大河へ海へ一葉  0 生きながら死にながらエイ笑まう  0 意思ありて意思なくクラゲ寄り添う  0 風邪気味に雨のさくらのいろは  0 小春日のあと数秒の夕陽  1 天国を見下ろしているキリン  1 黒馬の黒目の奥に飛雪  マブソン青眼(まぶそん・せいがん) 1968年、フランス生まれ。 ★閑話休題・・●「主流」創刊80周年!!記念(誌上)俳句大会 ご案内・・ 「主流」は終戦翌年の一九四六年五月創刊、「個人を尊重する」人間主義俳句提唱の旗のもと、その表現は必然的に口語体化し、真の現代俳句確立を目ざしています。  本記念大会には内外の現代俳句作者諸氏の出句を歓迎します。かつての「口語俳句全国大会」と思し召しくださって、ご出句のほどお願いいたします。         ◇作品募集◇  作品/未発表句3句  *内2句を誌上に掲載します。             *旧「口語俳句作品大賞」選考委員の選句をいただきます。  出句料/500円(小為替又は110円切手5枚。振替にて...

茨木和生「燃え尽きし星もあるべし春の空」(『さやか』)・・

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  茨木和生第18句集『さやか』(運河俳句会/発売・邑書林)、帯文は、谷口智行。それには、    やりぬくといふこと大事雲の峰    和生  これで誓子先生、暮石先生に顔向けができると、天空に心を解き放つ。俳句は言霊だと思い知らされる。  唯一無二の詩的世界築き、俳句を究めた男の至福の物語がここにある。  とあり、茨木曜「父との日々―-あとがきにかえて」には、 (前略) 閑話休題。俳句について門外漢である私にも、ひとつだけ父の俳句に思うことがあります。それは父の息遣いです。父の句を見るとき、何とも言えぬ「親父」の匂いを感じるのです。そして幼い頃、父とともに歩いた大原野での情景を思い出すのです。突然、前を横切るヤマカガシに目を細める父、アケビをとって手渡してくれた父、遠くに聞こえる鳥の鳴き声び「あれは雉や」と教えてくれた父。山に生える草木の名を口ずさむ父。自然と共に生きようとした父の姿が思い出されます。 (中略)  母が亡くなった後、「ええ俳句できてもなぁ。褒めてくれる多佳子がおらんねん」とひとりごち、寂しそうにしていました。 とある。また、 茨木衛「父と句集『さやか』―-あとがきにかえて」には、  第十八句集『さやか』は、第十四句集『潤』以降、孫全員の名を句集につけて残すという父の目標が達成できた句集です。「さやか」は私の三女で、現在中学一年生です。第十七句集『わかな』を発表して以降、四季の移ろいで生じる、ちょっとした変化を父が認めてきたものを、運河俳句会の谷口智行主宰のご協力を賜り、今回まとめることができました。(中略)  おそらく父は、行動範囲が以前より狭くなったにもかかわらず、私が感じている以上に四季の変化を捉え、第十七句集『わかな』の帯文で宇多喜代子先生が掛かれたように「春夏秋冬に生じる大小さまざまのことやものに固有の詩心を募らせ」ることで今回の作品を作り上げたのだと思っております。  とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。    妻もまたゐたる雛を飾りけり          和生    誓子忌に仰いでゐたる山の星   死ぬときは一日で来たり夏の蝶   どくだみもまじりてゐたる草いきれ   豊年や山々は雲湧き立たせ   山高きところに花のくづれたる   あの世への旅どのあたり秋の雲   かがやかに夜の峰見え雪...

吉田久美「裸木の幹に生命の走る音」(TAMA市民塾「現代俳句入門ー俳句は過渡の詩ー」第4回)・・

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 1月12日(月・祝)は、TAMA市民塾「現代俳句入門ー俳句は過渡の詩ー」第4回(於:多摩交流センター) だった。兼題は「一月」と「木」。以下に一人一句を紹介しておこう。    寒林を影と二人で登りけり       小田嶋英子   正月や猿黙々と宙返り         佐藤三千男    冬木立啄木の如掌を視る乎        小川幸子    まだ錨下ろさぬ老いのお正月       吉田久美   碧空や寒木の枝飛行機を射る      早川ひろ美    東大寺校木 (あぜき) 抜けるや隙間風   中田京子    鏡餅バオバブの木のかたはらに      宮石 修    枯れ木持ちチャンバラゴッコ追いし父   上阪則子   おみくじを木々に結んで初詣       村上佳枝    青空や鳥群たりて残り柿         田中典子    もち載せる木地 (きじ) の白さよ清々し  篠木裕子    一月やシルバーパスの一人旅       富山 勉    廃屋で孤高に実をつくミカンの木     中西雅子    精霊の宿る木々たち暖か哉        太田直子    めっきりと人の減りたる寒木立      森 和子   お正月青春かけし襷かな         花見育子    冷たがり木々の健気さ心萌ゆ       梶木純子    お正月ゲームに消える孫の声      大泉由美子    からすの巣支えていたか枯木立      石原美代    雪影の淡き心根昼の木に         大井恒行  次回は、2月9日(月)、宿題は、平仮名のみで句を作り、2句をお持ち寄る。        撮影・芽夢野うのき「サザンカサザンカ老人が羽になる」↑

各務麗至「ふゆのよはなみだまつすぐまつすぐに」(「詭激時代つうしん」17)・・

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 各務麗至の個人誌「詭激時代つうしん」17*栞版(令和八年一月九日・詭激時代社)、「詭激時代つうしん」18(*詭激時代つうし発刊開始資料として その6・栞版 令和八年一月十九日)の「あとがき」には、    新しく始まった、栞版「詭激時代つうしん」冊子だが、/この『あとがき』は戞戞百六十五号からで、/これがその後の一連の発端であり、その資料2は先行俳句で、もう一冊を思っているその発行日時も重要で改めて記憶に留めるべく「つうしん」で後日資料編集する。 ーー私にとって、それぞれがそれぞれにとんでもなく特別な一連になる。それというのも、五十数年一諸に歩いてきた、いくら甘いと言われてもいい、最愛といってよい妻が亡くなってしまった。人のいのちというのは一つの表現で……、  生きるという生活に、人間としてのありように、精神的高揚に、……、互いを尊重し合い、許し許され合い、支え支えられ合い救い救われ合い、それこそ互いの存在に今あることへの感謝し合って…‥‥、単なる夫婦にそんな言葉はおかしいかも知れないが、一種、信頼の盟友・同志でもあったのでないかと思っている。  とあり、また、同栞版「記録ノート」によると、「 令和七年一月九日、午後八時三十八分、逝去永眠。/死亡診断書から、/直接死因は多発性脳梗塞、発症から死亡までの期間21日。直接死因には関係しないが傷病経過に影響を及ぼした傷病名名等、末期腎不全、約33年。病死及び自然死 」とあった。ともあれ、以下に、句作品のいくつかを挙げておこう。    龍天に登るゆるりと爪を切る         夏 礼子    折鶴の匂う八十八夜かな   手鏡を磨く憲法記念の日   蛍火の闇が余白となりにけり   真夜中の通路が延びる敗戦日   目覚めれば忘れる夢や寒四郎   水仙の一輪は声あげにけり   春爛漫いらつしやいませジャングルジム    各務麗至   死なばこそいのちよいのちふぶきけり   死ぬ安心いのちよ妻よ花ふぶき   ここも今も一歩うごけば春の夢   生きて夏まういいかいまういいよ   擦れ違ひふれあふわたし年の暮   令和も七年ニッポンチャチャチャ夏の雲   私てふ日一人は遥か冬夕焼         撮影・中西ひろ美「極寒のマナーモードが鳴りやまぬ」↑

三ヶ島葭子「わが夫(つま」の冬着のシャツの厚ければ二枚洗ひて肩懲りにけり」(『みんなの近代短歌』)・・

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  髙良真実編『みんなの近代短歌』(草思社)、帯文に、  髙良さんの魔術によって、教科書から抜け出してきた晶子、啄木、かの子……。みんな生きている! ―-穂村弘  親切、真摯、辛辣…… 近代短歌を楽しむ最良のイヤホンガイドです!                       ―- 俵万智  近代歌人15人の代表歌550首に、丁寧な鑑賞を付した決定版アンソロジー。   従来、取り上げづらかった女性歌人も紹介。 本書で取り上げる近代歌人15人 石川啄木/島木赤彦/三ヶ島葭子/若山牧水/岡本かの子/与謝野晶子/北原白秋 今井邦子/前田夕暮/斎藤茂吉/釈迢空/片山広子/吉井勇/窪田空穂/土屋文明  「はじめに」には、 (前略)本 書は、まだ近代短歌に不慣れな読者のために、入口となるべく書かれたものである。一般にアンソロジーといえば、短歌作品だけ並べるものだ。けれども本書では、すべての歌に観賞を付した。鑑賞では、単純な現代語訳ではなく、文語のニュアンスも含めた印象が伝わるように意識した。( 中略)  歌人解説には、略歴、歌人としての魅力、そしてブックガイドを掲載した。(中略)   本書に収録したのは、主に一九一〇年代以降に活躍する歌人である。  まずはここから読み始めてほしい。本書によって、険しい道は平らかに、狭い道は広い谷となることを願っている。 とある。また、「おわりに」には、 (前略) 本書ではこうした慣例に反して、歌人十五人を没年順に配列した。本書に収録した家人は最年長が一八七六年生まれの島木赤彦、最年少が一八九〇年九月生まれの土屋文明であり、年齢差がそこまで大きくない。それゆえ彼らは共通して、一九〇〇年代前半におけるロマン主義の流行と、一九〇〇年代後半における自然主義への移行を経験している。  自然主義によって動揺した短歌史を、それぞれの歌人の視点から眺めることが、本書の中心的なテーマである。この時期は、昭和初期の新興短歌運動や、戦後の前衛短歌運動に比肩 (ひけん) しうる巨大な地殻変動が起こっていたものの、その意義は等閑視されているように思う。この状況に一石を投じたい。 (中略)    本書の配列を没年順とした理由にはもう一つある。それぞれの歌人の人生とともに近代史を眺めたいと思ったことだ。  例えば、啄木は関東大震災を経験しなかった。牧水は日中戦争下の軍国...

筑紫磐井「二位どのが田鶴(たづ)ゑがかせし屏風かな」(「翻車魚」vol.9・小蟻喰号より)・・

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 「翻車魚」vol.9・小蟻喰号(走鳥堂)、「翻車魚」は佐藤文香・関悦史・高山れおな三人の同人誌。本号の巻頭作品のゲストは生駒大祐、佐藤文香との詩と俳句の異種共作。。ここでは、高山れおな「筑紫磐井の百句(未完・全文とはじめの十句)」から、短い鑑賞文の句のみを紹介する。末尾の高山記に「 『翻車魚』第七号に掲載した『澤好摩の百句』、第八号掲載の『高橋龍の百句』に続いて本稿を計画しましたが、生業の方の見通しが狂い、いったん執筆を中止せざるを得ません。続きは一年後に出るであろう第十号をお待ちください 」とあった。他に、エッセイの関悦史「坂の上の大学における雰囲気学シンポジウムについて」がある。   (前略) 今春、五冊目の句集『百題稽古』を刊行したが、同書の収録作品を作る際には、なぜか星野石雀の『薔薇館』の参照率が高かった。 (中略)   一方、『百題稽古』という句集の性格からして、参照するのが自然のようでありながら、どういうわけか読み返すのを避けていた本もある。それがつまり、本稿の主たる対象となる筑紫磐井の『野干』『婆伽梵』で、この両著と『百題稽古』は王朝趣味を共有している。もちろん、その志向の作品としての現われ方は大きく違ってもいて、『野干』『婆伽梵』が王朝の幻想(後者はさらに中世・近世・大日本帝国時代へと取材の範囲を広げているが)をそれ自体を完結した形で描きだそうとしているのに対して、『百題稽古』では王朝趣味が貫徹しているのは百首歌の組題に基づく、題詠という形式性の方で、個々の俳句作品における王朝趣味の表出の仕方は一定しておらず、むしろ少なくない場合において王朝幻想の当世風俗化が図られている。話がやや大袈裟になるのを許してもらうなら、『野干』『婆伽梵』の世界がさながら冷泉為恭 (ためちか) の復古大和絵や前田青邨の歴史画に類するのに対し、『百題稽古』がめざしたところは浮世絵師たちによる伊勢や源氏の見立て風俗図でなければ、山口晃のレトロフューチャー合戦図・都市鳥瞰図のようなものかと思う。 (中略)    風薫る伊勢へまゐれとみことのり   10  伊勢神宮への公卿勅使 (くぎょうちょくし) の発遣を詠む。わざわざ京から公卿(三位または参議以上の上級貴族)を派遣して奉して奉幣し、祈願するものであるから、イコール国家の一大事の出来 (しゅったい) を意味する。伊勢に...

井澤勝代「めでたさも廊下の奥や屠蘇苦し」(「立川こぶし俳句会」)・・

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  1月9日(金)は、立川こぶし俳句会(於:立川女性総合センター アイム)だった。以下に一人一句を挙げておこう。    電飾の大裸木や星光る           井澤勝代    冬帝やダイヤの王冠富士纏い        髙橋桂子    妻介護愚痴は封印悴む手          和田信行    冬の川塔のへつりの百万年         尾上 哲    「わきました」ノーリツの声初湯かな    伊藤康次    熱燗の助けかりたしへりくつや       川村恵子     雑木の間より輝いて寒の月         山蔭典子    帰路急ぐ窓辺の灯り冬銀河         三橋米子    初山河綸言 (りんげん) 汗のごとしかな   大井恒行  次回は、2月13日(金)。   ★閑話休題・・森澤程「『明日香村飛鳥』の烏年あらた」(「~ちょっと立ちどまって~」2026・1・1)・・   「~ちょっと立ちどまって~」は津髙里永子と森澤程の二人の葉書通信。今回は「あけましておめでとうございます」とある。もう一人の津髙里永子の句は、    一陽来復プラネタリウムにて眠る        里永子       撮影・芽夢野うのき「白菜のでんと居座る母の尻」↑