伊藤政美「わが息を向ひ風としかざぐるま」(『天王森集(てんのもりしゅう)』)・・


 伊藤政美句集『天王森集(てんのもりしゅう)』(菜の花会)、著者「あとがき」に、


 この句集は、既刊の四冊『天の森』『天網』『天音』『父の木』を集約したものである。(中略)先の『天の森』の「あとがき」にも書いたが、集名にした天王森というのは、この地の古い字名である。

 それまで四日市の旧市内に居た私たち一家は、昭和二十(一九四五)年六月の空襲で、祖父母の生地である今のこのところへ移り住んだ。以来、一度も外へ出ることなくここに住み続けている。当然私の大方はここから生み出されたものである。(中略)

 「〈俳句は積み重ね。毎日毎日が大切。それはまた、今を大切に生きることでもある〉といういさを先生の言葉が重い」と書き「すべてに、向き合って生きる姿勢を崩さないようにしたい」と締め括った。

 それは、今も変わらない。

 四冊に収録した句数は、一三六六句。そのうち今回残したのは、五六四句。それが今の気持である。


とあった。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  裏山という名の山も笑ひけり        政美

  田がふくれ山がふくれて若葉雨

  枯野明るしまだ未知の空があり

     木下闇生者は死者に忘れられ

  地に届くまで雪といふ暗きもの

  朧の夜生きてゐるから訃報来る

  日向ぼこ黙つてをればあたたかし

  冬銀河この世通りし父よ母よ

  花筵いつも真ん中空いてをり

  白日傘行く最後まで真白なり

  見てをらぬあひだも揺るる秋桜

  いま死ねば反古も遺品や秋灯下

  出だしだけみな知つてゐる手毬唄

  花道も末路も桜吹雪かな

  命がけの時間始まる地虫出て

  鳴かぬのに鳴かされてゐる亀の春

  人は淋し蓑虫鳴かせ蚯蚓鳴かせ


 伊藤政美(いとう・まさみ) 1940年9月、三重県四日市市生まれ。


★閑話休題・・赤野四羽「殺すなとあらゆる言葉砂嵐」(夜蟻ズ×Marfaより)・・



 昨日、8月12日(日)午後3時~JR武蔵境駅近くで行われた「夜蟻ズ×Marfa」(於:810 OUTFIT)に出かけた。俳人・赤野四羽(よつば)こと夜蟻ズ「アカノシバヒト(sax)・鈴木和哉(drums)・山下渉(guiar)・渡辺隼巳(contrabass)」&Marfa(舞手)のジョイントライブであった。句は、アカノシバヒトのTシャツに彼自身が揮毫した四羽の句である。



       撮影・鈴木純一「空蝉はだいじな人の贈り物」↑

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