黒岩徳将「この中に頭痛のしやぼん玉あらむ」(『渦』)・・


 黒岩徳将第一句集『渦』(港の人)、その「あとがき」に、


  二〇〇六年~二〇二三年の三三〇句を句集に収めた。編年体ではなく、五つの章を立てた。(中略)

 句集題「渦」は友人に提案いただいたものである。これからも事物や人の中で、時に巻き込みながら、時に巻き込まれながら生きていきたい。

 詩歌は苦々しい現実から離れて私の呼吸を深くしてくれるものには違いないが、同時に私を現実世界に踏みとどまらせてくれる重石でもある。(中略)

 俳句は苦しい詩型である。しかし、苦しさと同時に復活と再生をも表現できる。負を正に変える力を信じたい。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、集中よりいくつかの句を挙げておこう。


  LOVEと背に描きたるデモの裸かな     徳将

  この蔦を越ゆれば変はる学区かな     

  いつまでも来ず寒柝の三打目は

  蝌蚪の頭が一つ日輪覆ひたる

  パイナップルケーキ碧潭風景區

  八の字に糞まる犬や豊の秋

  俺と牛の頬にほくろや冬青空

  遊船や傘も手帳も膝の上

  綿虫を見てゐて首が水平に

  激流は喉奥にあり蒼鷹

  桜蘂降る更新のなき夜空

  ゐのこづち下から上に叩き払ふ

  たくさんの手を山霧に翳しゐる


 黒岩徳将(くろいわ・とくまさ) 1990年、兵庫県神戸市生まれ。



★閑話休題・・津髙里永子「春の闇襁褓試してごらんなさい」(「~ちょっと立ちどまって~2024,4~」)・・


 月に一度、森澤程と津髙里永子二人の葉書通信。毎月、きまじめに各5句がしたためられている。


  蝶一頭仙洞御所を出てゆかず      森澤 程



               撮影・鈴木純一「音もせず姿も見せず 夜 来たり

                                        朝には帰る 立花の 君」↑

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