加藤楸邨「落葉松はいつめざめても雪降りをり」(「新・黎明俳壇」第9号より)・・

 

 「新・黎明俳壇」第9号(黎明書房)、特集は「芭蕉『おくのほそ道』の名句を読む」。扉に武馬久仁裕は「本特集では、その『おくの細道』の前半・後半から各一句ずつ選び10のペアを作りました。それを、現在活躍中の気鋭の俳人10人に鑑賞していただきました。芭蕉の名句をペアで鑑賞する楽しさ、面白さを味わってください」という。その10名の鑑賞者は、なつはづき・小枝恵美子・川島由紀子・山科希・かわばたけんぢ・横山香代子・二村典子・川嶋ぱんだ・村山恭子・田中信克である。

 特集以外の記事・前野砥水の「私の海外詠⑧/ポートレート・イン・アルプスエッツタール渓谷」が面白かった。


   氷河融け遅き目覚めのアイスマン   砥水(とど)

 儂は三十余年前アルプスの氷河から目覚めた「エッツィ」じゃ。階級社会の黎明期に才覚を発揮した儂を羨む者に襲われ、アルプス山脈へと逃れたが、追っ手から肩に矢を受け此れが致命傷となってしもうた。痛恨の極みながら我が怨念が届いたのか温暖化の所為なのか、五千年ぶりに氷河から解放されることが出来た。

 それにしても暫く眠るうちに随分と暑くなった。(中略)たいそう生き辛そうじゃ。まあ~心配はいらんて、直に海水面が上昇するから、皆して水面下に沈むのじゃ!!


 ともあれ、以下に本誌より、いくか句を挙げておこう。


  世の人の見付けぬ花や軒の栗 (須賀川)  芭蕉

  象潟や雨に西施がねぶの花  (象潟)    〃

  鬼百合を眺めてをれば雨が降る     岡本亜蘇 

  大寒の人きてひとの死を言ひぬ     内田美紗

  まくなぎを払いのけつつ友来たる    太田風子

  しんしんと肺碧きまで海の旅      篠原鳳作

  妻と目の合いたる宵や虎落笛      北野武志

  さくら活けた花屑の中から一枝拾ふ  河東碧梧桐

  涼しげなスイカ描かれた自由帳    宮本朝陽香(第40回・特選)

  ゴキブリより素早し妻がスリッパは   海神瑠珂(〃・ユーモア賞) 

  鰯雲のそりのそりと猫が来る      本田映子(第41回・特選)

  盛りには文句も出ぬが残暑では    岡崎亜佐子(〃・ユーモア賞)

  苦瓜にひとついただきますという   武馬久仁裕(選者詠)



         撮影・鈴木純一「駅弁の鮨が片寄る猫八忌」↑

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