飯田蛇笏「つぶらなるなす汝(な)が眼吻(す)はなん露の秋」(『山の本棚』より)・・
池内紀著『山の本棚』(山と渓谷社)、本書は月刊誌「山と渓谷」の2007年1月号から2019年10月号まで連載された「山の本棚」を一冊にまとめたもの。従って、ブログタイトルにした蛇笏の句「つぶらなるなす汝が眼吻はなん露の秋」は、『飯田蛇笏集成』(角川書店1994年~95年・全7巻)で池内紀の記事中にある。その中に、
飯田蛇笏句集は山の本棚に欠かせない。本名、飯田武治。山梨県東八代郡五成村(のち境川村。現・笛吹市)の旧家の生まれ。一度は東京に出たが、家を継ぐべく二十四歳のとき郷里に帰った。明治末年のことである。
つぶらなるなす汝(な)が眼吻(す)はなん露の秋
若いころはローマン的な作風だった。それがしだいに変わっていく。
炭売(すみうり)の娘(こ)のあつき手に触(さわ)りけり
旧家の総領息子にとって、山居は宿命のようなものだったのだろう。そこから悠大な風土を詠み込んだ格調高い作品が生まれた。
雪やみて山岳すわる日の光り (中略)
極寒の塵(ちり)もとどめず巌(いわ)ぶすま
何万語ついやしたからといって、山の壮大さが伝わるとはかぎらない。切りつめられた十七音が巨大な大地のかたまりと向き合って、一歩もひかないけしきである。
とあった。ともあれ、本書中にいくつかの句があるので、そのなから二、三挙げておこう。
山冷えに濃き薄きある紅葉(もみぢ)かな 井上井月 『井月句集』(岩波文庫)
吹きよせるかぜも木の葉の名残かな
雉鳴くや(かん)八州を一呑みに 『写真句行 一茶生きもの句帖』(小学館文庫)
古郷は蠅すら人をさしにけり
池内紀(いけうち・おさむ)1940年、姫路市生まれ。
芽夢野うのき「照り翳り柘榴の一つ天上へ」↑
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