佐藤延重「踏絵なら僕は踏んじゃう自動ドア」(『蟬時雨』)・・


  佐藤延重第一句集『蟬時雨』(ふらんす堂)。序も「あとがき」も何もない、今どき珍しいシンプルな句集。帯の惹句に、


    産業廃棄物の/山/墓である

 一行詩をたしなむ作者の型にはまらない第一句集。

 どこか懐かしく心に響く一書。


 とある。章立ては、「何がさて」「産業廃棄物」「墓が足りない」の三章からなっている。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。


  何がさて平和を願う初山河       延重

  泣いている蟬の時雨の降る下で

  俎板に鯖が一体不発弾

  渋谷スクランブル交差点夕立

  森閑とこの四次元を雪は降る

  真ん中は愛(かな)しいですね秋の空

  端っこも愛しいですな秋の空

  振り向いてだぁーれもいない空ッ風

  鶴帰る亡き母の名は仮名のツル

  戴けるならその籠の蕗の薹

  僕達は勝利したのか神の留守

  ヤーイヤーイ佐藤延重放屁虫

  抜け道を抜けてまた道暮早し

  咳ひとつ瞬時に消えて夜の底


 佐藤延重(さとう・のぶしげ) 昭和14年、秋田県生まれ。

 


   撮影・中西ひろ美「うっかりもしっかりも隠しきれない」↑

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